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恒大集団どころではない、習近平の夢「一帯一路」が崩壊中。G7が中国に突きつける三行半、財力外交の限界露=勝又壽良

焦げ付き始めた「チャイナマネー」の海外融資

中国が、「一帯一路」を食い物にしているという国際的な評判が広がり始めたのは、2018年ごろからだ。「一帯一路」融資では、パキスタンが金利の二重取りをされていることに気づき、契約条項見直しする事態も見られた。

こうした悪評が立ったことで、それまで「一帯一路」に期待を賭けて来た国の熱意が失われる一方で、中国で肝心の資金的な行き詰まりが明らかになってきた。

2016年以降、中国の経常黒字が減少傾向を見せ始めたのである。経常黒字を支える最大要因は貿易黒字である。それが、次第に低下状況になってきた。昨年の貿易黒字は、5,353億ドルと2015年以来の高水準を回復したが、「パンデミック特需」であった。現在の米中デカップリングと、サプライチェーンの世界的再編成の動きから見て、今後の貿易黒字が増える見通しは立たないのだ。

結局、「チャイナマネー」は、すでに峠を越えたというべきである。

中国が主導して創立したAIIB(アジアインフラ投資銀行)は、営業を始めてみたものの、貸付業務の不慣れと人材不足に悩まされ、独自融資には慎重である。勢い、ライバル視してきた日米主導のADB(アジア開発銀行)の融資案件に相乗りする協調融資でお茶を濁す始末である。中国の狙った国際金融業務は、全て失敗の烙印が捺されている。

その裏には、中国経済がすでに2010年代半ばの勢いを失い、陽が西に大きく傾いている影響である。

中国が、「一帯一路」融資で消極姿勢に転じている裏には、これまでに発展途上国への隠れ融資残高が43兆円にも上がっている事実が存在する。従来なら、融資条件に従い担保物権を取り上げれば、それで形がついたはずである。だが、債務国の発言権が強くなってきたので、逆に中国は悪者にされかねない事情へと逆転している。攻守ところを変えたのだ。「高利貸し」や「国際詐欺師」という汚名を避けるには、資金回収に当って「忍」の一字に徹するほかない。

前記の「隠れ融資43兆円」は、次の調査によって明かされた。

米民間調査機関のエイドデータ研究所が、9月29日に発表した報告書は、中国政府や国有企業が2017年末までの18年間に、アジアやアフリカなど165カ国で資金を拠出した13,000件以上(総額8.430億ドル超)の事業について、支出額や負債額などを調べたもの。それによると、多数の中低所得国が巨額の「隠れた債務」を抱え、その総額は3,850億ドル(約43兆円)に上ることがわかった。『フィナンシャル・タイムズ』(9月29日付)が報じた。

8,430億ドル超の融資に対して、未返済が3,850億ドルにも達している。率にして45.7%にも達するのだ。3,850億ドルといえば、2016~17年の経常黒字に匹敵する金額である。それが、未返済のままなのだ。中国としては、契約条項に従い、即時に担保物権の差し押さえに出たいところであろう。現実には、国際世論の目があるのでそれもできない。悶々としているに違いない。身丈に合わないことを行った。それへのブーメランなのだ。

財政に苦しみ発展途上国への「援助切り」

中国は、発展途上国に対しすでに43兆円もの「隠れ債権」を抱えている。こうなると、新規の貸付けや援助に慎重姿勢で臨むのは当然である。

豪シンクタンクのローウィー研究所が9月29日に発表した「太平洋援助マップ」によると、中国の太平洋島嶼国への援助は2019年に31%減の1億6,900万ドル(約189億3200万円)となった。過去10年間で最少を記録した。

習近平氏は2018年末、パプアニューギニアを国賓訪問した。19年後半、キリバスとソロモン諸島の2つの太平洋島嶼国は、台湾と国交を断絶し、北京と国交を樹立した。中国共産党にとっては、同地域での大きな外交勝利となったのである。

習氏は、本来ならば台湾と断交させる鞍替えに成功したのだから、資金をばらまいて当然である。現実は逆であった。19年の援助額が急激な減少をしており、「見せ金」に終わったのだ。中国からの援助は、2016年がピークで2億8.700万ドル(約321億円)である。前記の経常黒字の推移を見ると、中国の懐具合を率直に反映した「援助切り」を行っている。

米国、日本、豪州、ニュージーランドは近年、「一帯一路」に代わるプロジェクトを提供する取り組みを強化している。2019年に行った太平洋島嶼国への援助金は、合計24億4,000万ドル(約2,700億円)にのぼる。中国の1億6900万ドルに比べて14.4倍だ。これでは、もはや中国の「一帯一路」の出る幕がなくなったと言えよう。金の切れ目は、縁の切れ目になろう。

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