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恒大集団どころではない、習近平の夢「一帯一路」が崩壊中。G7が中国に突きつける三行半、財力外交の限界露=勝又壽良

中国の大きな経済政策であった「一帯一路」が暗礁に乗り上げている。すでにチャイナマネーは枯渇し始めて同政策への投資が困難になり始めたのだ。また対抗する「G7」の途上国へのインフラ投資計画も予定され、中国から離反する国々があらわれ始めた。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年10月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

国内外で失敗に終わる中国の経済拡大路線

中国の経済的な拡大路線は、内外ともに破綻したと言える。国内は、不動産バブルの破綻である。国外では、発展途上国へ地歩を固める狙いの「一帯一路」戦略である。いずれも、資金的な供給が困難になったことが原因である。

「一帯一路」は、国内の過剰生産のはけ口を求めて始まった。2008年のリーマンショックを乗り切るべく当時、4兆元の投資を行った。それが、基幹産業の鉄鋼・アルミ・セメントなど素材産業の過剰投資=過剰生産を生み出した。

そのはけ口として2013年、習近平氏によって「一帯一路」計画が発表された。同時に、中国の政治的な権益拡大という狙いを込めていたのである。

この「一石二鳥」の政策によって、中国は世界覇権への足固めを狙っていた。

国際的な高利貸し行為だった「一帯一路」海外投資

当時の中国経済は、飛ぶ鳥を落とす勢いであった。経常収支の黒字は、次のような推移を辿っていた。

2012年:2,153億ドル
2013年:1,382億ドル
2014年:2,360億ドル
2015年:3,041億ドル
2016年:2,022億ドル
2017年:1,951億ドル
2018年:255億ドル
2019年:1,413億ドル

習近平氏が、国家主席に就任した2012年は2,000億ドル台の経常黒字であった。経常黒字は、国内外の総合的な貯蓄高を示している。これが増えれば、海外への投融資が可能になるのだ。習氏がその後、強気の「一帯一路」政策で、海外への投融資を強化する基盤の経常黒字が整っていたのである。

中国は、「世界の工場」としての役割を担い、世界のサプライチェーンの中枢であった。権力者の身とすれば、こういう恵まれた状況が未来永劫に続くと錯覚もしたくなろう。習近平氏は、側近の強気政策を受入れて「一帯一路」政策へ着手したのだ。

習氏は、「一帯一路」融資で大きな方針転換を行った。それまでの中央銀行経由による低利・長期の融資方針を商業ベースの融資に変えたのだ。中央銀行である中国人民銀行が身を退き、国有銀行や国家機関が前面に出て、高利・有担保の融資方針に切り変えた。これによって、「一帯一路」融資が秘密主義に陥り、中国と結んだ融資契約書は、国際機関といえども開示しない秘密条項を強要した。

万一、開示された際には「即時、全額返済」というような圧力を加えて、世界に知れることを恐れる融資内容であった。中国が、一方的に有利な契約条件であったのだ。この状態は、私に言わせれば、「国際高利貸し」「国際詐欺師」に当る内容で、発展途上国の立場に立ったものではない。日本のODA(政府開発援助)とは似ても似つかぬ内容であった。

ODAは、政府資金を原資にするから、超低金利(事実上のゼロ金利)が可能になる。「一帯一路」は商業ベースの融資だから年利5%程度を科していた。元利返済できなければ、担保を徴求するという高利貸しになったのだ。中国は最初、「ニーハオ」と微笑を振りまき、返済できないと見るや、「鬼」に変じて担保を差し押さえるのだ。

その犠牲国として、2例が報じられている。

Next: 発展途上国への融資が焦げ付いても、担保物権を奪い取れない事情

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