その論調で、自由貿易の守護神を任じてきた英誌『エコノミスト』(8月27日号)は、次のような指摘に変わった。
「ウクライナ紛争から学ぶ教訓があるとすれば、好戦的な独裁国家と対立するには多面的に行動しなければならないということだ。ハードパワーは欠かせない。民主主義諸国は、敵対国が優位にある資源への依存を引き下げねばならない」としている。自由貿易から離脱することである。グローバリズムへの離別を意味するのだ。
西側諸国は、中国サプライチェーンに依存する部分を減らす。これによって、中国が台湾侵攻した場合、すぐに経済制裁をしても「跳ね返り」を受ける部分が少なくなり、長期に中国封じ込めが可能になるという提案だ。
台湾有事の認識がない
前記の認識は、韓国にはまったく存在しないものである。台湾有事について、対岸の火事という認識だ。韓国は、できるだけこの「火の粉」を浴びないようにする「逃げの姿勢」である。
だが、中国海軍によって台湾海峡が封鎖される事態となれば、韓国のシーレーンにも重大な障害になる。この点が、不思議とスッポリ抜けているのだ。韓国だけ、中国軍から特別の便宜を受けられるとでも考えているのだろう。現実問題として、そのようなことはあり得ない。等しく、シーレーン封鎖の障害を受けるのである。
韓国が、台湾有事の認識で希薄な裏に、中国に対する異常なまでの融和姿勢を感じさせる。米国の「半導体法」が、韓国半導体企業にとって、厳しい内容であることを気付かせないほど無警戒ぶりである。
中国に生産拠点を持つ台湾積体電路製造(TSMC)や米インテル、マイクロンなどは、米国での生産を増やす一方、中国が先端半導体を入手しにくくするよう圧力を受けている。これは、韓国半導体企業にとっても同じ「向かい風」が吹いているはずだ。
この点について、韓国企業は深刻に受け取っている雰囲気がなく、「何とかなるだろう」という安易な姿勢で臨んでいる。
事実、韓国は中国と経済対話会議を開いており、「中韓は協力し合って」という抽象的なことを言い合っている仲である。だが、自由世界の雰囲気は、そんな牧歌的なものでなくなっている。中ロを枢軸として捉え、世界の平和にとって障害物という認識を日に日に強めているのだ。その中で「中韓は協力し合って」と言っているのでは、中国の期待感を膨らませるだけである。
だが、米国の半導体法は、それを許さない内容だ。韓国の認識は、まことに甘いと言うほかない。