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韓国経済の柱「半導体産業」が折れる寸前。米国の“囲い込み”法で大打撃、日本と同じ盛衰の道を歩む=勝又壽良

韓国経済を支えているのは、高付加価値の半導体産業である。汎用品のメモリー半導体では、世界1位がサムスン、2位はSKハイニックスである。中国へも工場進出しているが突然、暗雲が垂れ込めてきた。8月9日に米国で成立した「国内半導体産業支援法」が、韓国半導体にとって大きな枷になるからだ。韓国半導体も、日本半導体の歩んだ盛衰の道を歩まされる危険性が高いのである。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年9月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

韓国経済を支える「半導体産業」に暗雲

韓国経済を支えているのは、高付加価値の半導体産業である。汎用品のメモリー半導体では、世界1位がサムスン、2位はSKハイニックスである。

中国へも工場進出しているが突然、暗雲が垂れ込めてきた。8月9日に米国で成立した「国内半導体産業支援法」が、韓国半導体にとって大きな枷になるからだ。

この法律は、米国内での半導体製造に対する約520億ドルの政府補助金のほか、半導体工場向け投資を促進するための推定240億ドルの税額控除などが盛り込まれている。

問題は、外国の半導体企業といえども、米国で政府補助金や税額控除などの恩典を受けた場合、中国への投資で制限を受けることだ。サムスンもSKハイニックスもその対象になる。

サムスンやSKハイニックスは、中国で幅広い半導体投資を行なっている。当然、前記の「国内半導体産業支援法」の影響を受けて、思わざる制約条件が付くことは間違いない。

同法によれば、2年に1度の見直しが行なわれる。米中対立のいかんによっては、どのような厳しい条件が付くか予測できないのだ。

米国半導体法の影響力

中国では、この法律が持つ「メガトン級」の影響力について早くも反応している。

中国の経済団体である中国国際貿易促進委員会と中国国際商会は8月10日、「半導体産業の地政学的な競争を激化させ、世界経済の回復や技術革新の成長を阻害する」と非難した。中国外務省も10日、新法について「経済的な脅迫だ」と批判し反発を強めている。

米国が、このように半導体囲い込みの立法措置に踏み切った裏には、中国による「中国製造2025」(2015年発表)の存在がある。政府の補助金で、中国製造業の高度化を推進するという内容だ。具体的には、次のような構想を立てた。10大重要産業育成計画で、半導体もむろん入っている。

「中国製造2025」は、「3つの段階」を経て世界一の「製造強国」になるというものである。

1)ステップ1では,2025年までに製造強国の仲間入りを果たす。
2)ステップ2では,2035年までに製造強国の中位レベルに到達する。
3)ステップ3では,建国100周年の2049年までに製造強国の先頭グループへ。

米国トランプ政権(当時)は2018年、この「中国製造2025」が補助金による産業育成計画であり、WTO(世界貿易機関)規則に違反するとして取り上げた。だが、中国は意に介せずに補助金による産業育成を強行した。これが、米中対立の導火線になった。以来、米国は中国の強硬姿勢の裏に、世界秩序への挑戦が隠されていることに気づき、中国への警戒姿勢を強めてきた。今回の「半導体囲い込み」は、米国による中国へ対する不退転の決意を見せたものだ。

中国は、自国が「中国製造2025」で戦略産業の育成強化を打ち出している以上、米国に対して「異議」を言える立場になく、「天に唾する」行為そのものである。

中国は現在、ロシアへ接近することで「中ロ枢軸」と言われる密接な関係を構築している。今年2月のロシアによるウクライナ侵攻では、ロシアを非難せずNATO(北大西洋条約機構)を批判してロシア擁護に回った。中国が将来、台湾への軍事侵攻意図を間接的に表しているものと見なされ警戒されるに至った。

今年のNATO首脳会議では、ロシアを非難する一方で、中国へ警戒する姿勢を打ち出すまでになった。中国が、このようにヨーロッパの軍事同盟(NATO)からも危険視されていることは、アジアの攪乱要因だけでなく、世界の秩序破壊国という位置づけになった意味である。そして、中ロ枢軸への経済的な封じ込め策として、中国とのデカップリング(分断)が、世界的に議論され始めているのだ。

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