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米失業率悪化で12月の利上げ幅は0.5%に減少、中国コロナ隔離政策緩和報道で景気回復期待に踊る米国市場=新天地

11月4日発表された雇用統計が予想よりも0.1%高く、パウエル発言のショックで下げていた分、米国株式市場自立反発をした。12月の金利の上げ幅が下がるとの期待、さらには中国のコロナ対策が緩和されるとの報道もあり、景気回復期待から上昇を見せた。希望的観測による市場の動きは継続するのだろうか?(『新天地の株式投資日記』)

【関連】米国株式市場は“異常な金融引き締め”に耐えうるか?「先行銘柄」とインフレ・ウクライナ・半導体で読み解く22年後半相場の行方=新天地

※本記事は有料メルマガ『新天地の株式投資日記』2022年11月5日6日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月分無料のお試し購読をどうぞ。実際に配信されたサンプル号もお読みいただけます。

プロフィール:新天地
祖父の影響で子どもの頃から株の売買を行う。証券会社で自己売買業務を経験後に退社、現在はデイトレーダー。メルマガでは主に脱初級・中級者向けに、東証・NYの市況(市場雑感)、相場の考え方、取引手法などを解説。一般に書かれることが少ない空売り戦略や取引アルゴリズムに関してもプレーヤーの立場から丁寧にフォローする。

米雇用統計で自律的反発

4日のアメリカ市場は雇用統計の解釈をめぐって上下。 結局「リターンリバーサル」(今日の場合は下がった株が戻ってくる)の格好もあって、パウエル会見で大きく下げた後の自立反発的な動きを見せた。

雇用統計は26.1万人と予想(ブルームバーグ集計で19.5万人)よりも、雇用増が多かった反面で最高値は下回っていることを再確認。求職者の増加もあって失業率が3.7%と予想の3.6%、先月の3.5%よりも悪化。

結果として「景気減速・雇用需給の軟化方向にあり、12月の利上げが0.5%にとどまる説得材料になるのでは無いか?」という思惑が株価を下支えした。

一方で現在までの利上げや量的金融縮小にもかかわらず、まだまだこれだけしか失業率が悪化しない状態では最終的な利上げストップはまだ先になる、という見方から2年国債(政策金利と密接な関係があるとされる)の利回りがパンデミック以来の最高水準を記録。金利上昇を嫌って、株価指数がマイナスに転じる場面もあった。

(パウエルがあそこまでタカ派姿勢を見せた以上、生半可な雇用悪化が起きただけでは利上げ停止はないだろうってことね)

また、ECBのラガルド総裁も「インフレ率を2%の目標まで下げるには金利を『制限的な水準』(景気を悪化させる水準)まで引き上げる必要があるかもしれない」と将来的なターミナルレートが景気を鈍化させる水準まで引き上げないとインフレ退治はできない可能性があることを示し、これも金利上昇に資した。

結局、利回り上昇はあったものの、今週の下げのスピードが速かったこともあって、買い戻しが優勢に。ただダウは久しぶりに週単位での下落で引ける週になってもいる。

なお、後述するけど、10月終わりから「中国の感染対策が大幅に緩和されるのでは?」という噂で、香港市場が反発していた(ただし当局は確認してこなかった)わけだが、これがどうやら本当らしいということで、中華ADRがそろって大幅続伸。あわせて中国で景気回復・あるいは景気対策が行われるならということで商品市場にお金が急流入した。金曜日はドル安傾向もあり、コモディティ(商品)はドル建て価格がさらに押し上げられた面もある。

WTI原油が5%以上上げて一カ月ぶりになる92ドル越え。原油はEUによるロシア産原油の事実上の禁輸措置が迫っていることも上昇要因。

戦争関連株ウォーベイビー(warbaby)

英語で、戦争中に生まれた子供(の世代)を「ウォーベイビー(warbaby)」という。アメリカの株の世界では(最近ではあまり言わないようだが)戦争に伴って大相場になる株のことをこれになぞらえてウォーベイビーと呼ぶのんだそうな。

戦争になれば軍需物資が必要になったり、あるいは戦争当事国・地域で生産シェアが高い製品が存在したりする。それらが品薄になったりして株価がどんどん上がっていったりする。それをウォーベイビーと呼ぶんだな。

という豆知識はさることながら米国の著名な投資家ギャンはそれに絡んで著書の中にこんな経験談も残している。

とある知り合いのウォール街の老人が運良くウォーベイビーの上がり始めを買い付けた。株価はどんどん上がり老人の含み益は急速に膨らんでいく。ギャンはもう天井に達したと思い(当時すでにギャンは相場の世界では知られていたプロだった)、老人にそろそろ利益確定すべきだ、と親切心から助言した。

しかし、毎日急騰続ける株価を前にして老人はいったそうな。この株たちはまだまだ上がる。もっと上がったら利食いする。今は売らない。

はたしてギャンの読み通り、それらの株は下がっていった。結局老人は凄まじく膨らんだ含み益を一度も実現益に変えることなく株価は故郷に帰ってきた。老人は夢よもう一度、と思いそれらの株を未だ保有しているがもう老人の生きている間にそんな相場はないだろう…

Next: 一度大きく上がって下がった株は戻るまで時間がかかる

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