年金も乏しく、身寄りもなく、貯蓄のない老人はどうなるのか?
では、年金も乏しく、身寄りもなく、貯蓄もない独居老人は、どうすればよいのでしょうか。
最後の頼みの綱である「生活保護」で不足する資金を賄っていくよりありません。
東京23区の場合、単身の高齢者は、最高で月額13万580円が最低生活費(住居費と生活費など)となっていますから、介護が必要になった場合には、この範囲内の施設を探すしかありません。
前述した通り、公的施設の特別養護老人ホームは、要介護3以上なら入れますが、つねに入所待ちで簡単には入れません。もちろん、ここなら月額費用が安いので、生活保護費の範囲内でもギリギリ入所が可能です。
しかし、特別養護老人ホームには、簡単に入れないわけですから、そうなると介護を他人に委ねる形式では、貧困ビジネスの「無届介護施設」に入るしかない方法がないことにもなりかねないのです。
これなら1人10万円以内も可能ですが、防火設備もなく、大部屋に布団を敷いて雑魚寝といった不潔で劣悪な環境です。
しかも、スタッフが少ないので、ロクな介護も期待できません。
これらは、タダのカネ儲けのための民間施設にすぎないからなのです。
生活保護受給者を食い物にする老人介護施設
2020年時点で、「無料」や「低額」を謳う宿泊ビジネスが、全国には約580施設あり、約1万7,000人が収容されていますが、ほとんどの人が生活保護受給者です。
こうした施設以外にも、無届の事業者が数多あります。
事業者の目的は、生活保護費の搾取です。
8~9割もの保護費を搾取し、入所者には1万円前後の小遣い銭程度しか渡されません。
事業者は、ホームレスやネットカフェで寝泊まりする人に声をかけ、「住居を確保し、生活保護を受給できるようにしてやる」などと勧誘して、収容者を劣悪施設に確保します。
「住所」がないと、生活保護費は受給できないからです。
入所者の部屋は、ベニヤ板で仕切られただけの狭小空間に、使い古しのダニだらけの布団をあてがい、食事は毎回カップ麺や菓子パンを配るだけです。
こんな悪質かつ劣悪な宿泊施設同様のレベルで、介護が必要な老人までをも収容しているのが実態です。
こうなると、寝たきり放置プレイは当たり前となります。
もちろん、必要な医療も受けられません。
こんな悪質施設が、日本中に数多くあるのです。
それでも、行政は「立ち入り基準が明確でない」ことを理由に「立ち入り検査」さえも行っていません。
ゆえに、貧困ビジネス業者のやりたい放題がまかり通っているのです。
事業者の多くは、NPO法人が多いのですが、届け出を出せば、個人でも収容事業は始められるため、悪質な参入事例が後を絶ちません。
2010年には、全国で21施設を展開する、某事業者が、約5億円もの脱税で摘発されています。圧倒的な生活保護受給者の搾取ゆえに、濡れ手で粟のように儲かっているのです。
驚くべきことに、自治体側が、生活困窮者や貧困老人の処遇に困り、こうした施設に入所を斡旋する例も少なくないのです。
これでは、税金が原資の生活保護費が、悪徳事業者に好き放題にむしり取られていく構図に他ならないのです。
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