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エヴァ好き中国オタクが作った『原神』なぜ世界中で大ヒット?わずか2年で売上は東京ディズニーリゾートに匹敵=牧野武文

ついに出たヒット作「崩壊学園2」

2014年にリリースをしてヒットとなったのが「崩壊学園2」です(これが日本発売の崩壊学園になります)。美少女横スクロールシューティングゲームです。

miHoYoはこの「崩壊学園2」で「崩壊学園」の10倍の売上を目標にしていましたが、実際は100倍を突破するという大成功になりました。この頃には、中国の若い世代の多くがスマホを使うようになっていたことも大きな要因でした。これでようやくmiHoYoの経営は安定をします。

しかし、7人は休む暇もありません。崩壊学園2リリース後3日目にはサーバーがダウンをしました。蔡浩宇はサーバーの前に座り込んで監視をし、4時間ごとに再起動をしなければならなくなりました。さらにアプリからは大量のバグが発見され、課金もうまくできない現象まで起こりました。コールセンターなどもないため、代表の劉偉自ら電話に出て顧客対応をしていました。当時は全員が朝方3時まで働いて、翌朝9時には出勤するという生活だったそうです。

崩壊学園2の運営が落ち着いてみると、miHoYoには大金が残りました。これにより、人を雇うことができ、エンジニアチーム、アニメーターチームをつくり、次の「崩壊3」(崩壊3rd)の開発が始まりました。

この「崩壊3」はもはや3Dアニメといってもいいほどクオリティが高くなりました。ゲームは美少女シューティングですが、そのモーションが多彩で滑らかで見事なのです。3Dアニメのバトルシーンだけを抜き出してゲームにした構造です。このモーションの見事さ、多彩さ、滑らかさは「原神」にも受け継がれます。

崩壊学園2がヒットをすると、あれだけこちらから回っても相手にしてくれなかった投資家や企業が向こうから出資を申し出ることが相次ぐようになりました。しかし、このような申し出をmiHoYoはすべて断りました。理由は簡単です。開発資金ならたっぷりあるからです。彼らが商業的に成功をしたいと言っているのは、自分がお金持ちになりたいからではありません。次の作品の開発資金が欲しいだけなのです。これ以降のmiHoYoは、お金があればあるだけ制作に賭けてしまい、クオリティーが上がっていく状態になりました。

この「崩壊3」も大成功で、崩壊学園2とは1桁違うお金が入ってくるようになりました。すると、miHoYoは当然のようにそのお金を次の作品の制作に使っていきます。そこから生まれたのが「原神」なのです。

原神はなぜ成功することができたのか?

原神の特徴は多様性です。主人公も男性か女性を選べるようになっています。これは男性が自分の分身キャラを男性にするか女性にするかを選べるというだけでなく、女性も分身キャラを男性か女性を選んで遊べるということです。実際、原神を遊ぶ女性は珍しくありません。

また、登場する都市も西洋風、中華風、日本風とさまざまな文化の都市が登場します。これも世界中で遊ばれることを意識したものです。

しかし、蔡浩宇は「全人類に共通する美しい風景がある」と言います。原神ではその美しい風景がふんだんに登場します。ゲーム開発環境「Unity3D」を使っているため、ゲームの背景は常に3Dでリアルに描かれます。美しい風景を画像として挿入するというのではなく、ゲーム世界を移動している間にふと美しい風景に出会うのです。

原神では、光の方向と物体の反射については細かいチェックが入り、何度でもやり直しをします。ゲームの中では1日の時間が流れていて、昼間もあり夜もあり、太陽、月は一定のルールで方向が変わり、光の強さも変わっていきます。風景もこの光の変化によって変わっていきます。

これにより、「美しい風景の場所が用意されている」のではなく、ゲーム世界内で移動している時に偶然、美しい風景に出会う、発見するということが起こります。そのため、それぞれのプレイヤーが、自分だけの「美しい風景」に出会っているのです。

原神の最初のリリース版では33名のキャラクターが用意され、毎年17名ずつ追加されていきます。このキャラクター設計も独特です。あまり質の高くない萌えゲーの場合、髪は「ロング、ショート、ポニーテール」、色は「黒、茶、金髪」などという要素を選び出して、順列組み合わせでキャラを生成していくようなことをします。しかし、このやり方だとキャラに感情移入ができず、飽きがきてしまいます。

原神では先にシナリオ設計が行われます。シナリオが決定してから、その登場人物としてキャラ設定が行われます。

そのため、キャラとシナリオがしっかりとリンクをし、記憶に残るため、愛着が湧いてくるのです。

しかも、キャラ決定権を持つ監督という役職がありません。一定の資格を持つスタッフが参加できるキャラ決定会議があり、そこで全員一致で採用されるまで何度でも練り直します。

美術スタッフが原案を描き、それを3Dモデル化したデータを元に全員で全員が納得いくまで話し合い修正を加えていきます。ですので、監督個人の趣味が全面に出てしまい、偏ったキャラばかりになるということも起きません。

この他、ゲームの細かい話をしていたらキリがありません。一言で言えば、崩壊3で大きな資金を得たため、原神では自分たちがこだわりたいところを徹底的にこだわった仕事をしたということなのです。そして、人を雇用することもできるようになり、原神は約800名のスタッフで制作されました。出世作の崩壊学園2の7人から比べると100倍以上のスタッフです。

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