テンセントからの出資話にも袖を振る
原神は2020年9月にリリースされますが、この直前、テンセントが接触をして投資を持ちかけています。しかも、株式を保有させてもらうだけで制作内容には一切口出しをしないという好条件でした。この話もmiHoYoは断ります。理由は簡単です。お金はもうじゅうぶんにあるからです。
miHoYoの中心メンバーがどのように考えているのかは、インタビュー記事などから推しはかるしかありませんが、彼らは自分の人生の経済的成功には無関心です。というより保有株だけで富豪と呼べるほどの資産家になっているため、それ以上の経済的成功を求めることに意味を感じていないのだと思います。現在の持ち株は蔡浩宇が41%、劉偉が22.6%、羅宇皓が21.4%、杭州米芸投資が15%となっていますが、米芸投資は最初に投資をしてくれた斯凱の投資会社「斯凱投資」を引き継いだ投資会社です。
それよりは、次の作品にじゅうぶんな制作予算を確保することを考えています。今のところ足りているので、外部の投資は受けていませんが、今後、必要だと思えば上場をするか投資を受けるかをするのだと思います。
miHoYoは、原神で儲けたお金をどうするのでしょうか。当然、次回作の制作費に使います。つまり、次回作は原神よりもさらにレベルアップすることは間違いありません。
すでに次回作「絶区零」(ジュエチーリン、Zenless Zone Zero)の予約受付が始まっています。まだリリース日も決まっていないのに、すでに280万人を超す人が予約をしています。同じくUnity3Dを使っていますが、今度の舞台は都市の中になるようです。
▲miHoYoの新作「絶区零」の公式サイト。iOSとAndroidで配信予定。原神を超える質の高いゲームになることはほぼ確実。
アニメシリーズのように進化する「原神」
この原神の最大の特徴は、形としてはゲームなのですが、miHoYoもプレイヤーもゲームというより、ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)の総合作品だと感じていることです。現在でも定期的に新しいマップが追加され、新しいシナリオが追加され、新しいキャラクターが追加されていきます。まるで、アニメシリーズが配信されているような感覚なのです。
miHoYoは、人から問われたら「私たちはゲームをつくっている」と答えるでしょうが、自分たちはゲームというより総合コンテンツをつくっているのだという感覚なのです。つまり、創業当時に「世界で最高のアニメ制作会社になる」「IPを確立して、それをさまざまなコンテンツに展開していく」ということを原神で実現してしまいました。
好きな世界観を作る90后の発想
90后の発想は、業界という先人がつくった枠組みの中にいったん入って、その壁を打ち破って、異業種を結合していくという80后のやり方と異なり、自分が好きな世界観を表現するために、アニメでもゲームでも先人がつくった枠組みを利用してつくってしまい、結果として異なる業界にまたがった新しいビジネス領域をつくってしまうことです。ビジネス側の発想で新しいビジネスを発想していくのではなく、消費者側からの発想で新しいビジネスを発想していくようになっています。
似たような発想で生まれたのが中国ドリンクカフェ「喜茶」(HEY TEA)です。創業者のニエ・ユインチェンは1991年生まれの90后でしたが、香港のミルクティーや台湾のタピオカティーなど、アレンジ中国茶で人気となっています。人気の秘密は、岩塩入りクリームチーズをトッピングした中国紅茶など、それまで飲んだことのなかった新しい中国茶にありますが、それだけでなく、カップやペーパーバッグ、 店舗インテリアなども人気です。つまり、お茶という飲料を提供するだけではなく、「こんな素敵な場所でこんな素敵なグッズに囲まれて、優雅に中国を楽しむ」という体験を実現するために、中国茶ドリンクの開発だけでなく、グッズデザインなどもして消費者に提供をしています。
行列ができる秘密はここにあります。デリバリーで飲むのでは楽しみが半減をしてしまうのです。やっぱりお店で飲みたいのです。
90后のビジネスは、このような消費者の目線で発想をし、必要なものを業界にこだわらず集めてきて実現する。そういうビジネスが目立つようになっています。今後、さまざまな分野で90后の活躍が目立つようになってくると思います。
・小米物語その70
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- vol.151:原神の売上は東京ディズニーランドとほぼ同じ。90后企業miHoYoの新しいビジネスのつくり方(11/21)
- vol.150:勢いのある種草ECに対抗するタオバオ。電子透かしを活用したユニークな独自手法を確立(11/14)
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- vol.119:付録部分(4/11)
- vol.119:主要テック企業はリストラの冬。安定成長へのシフトと香港上場問題(4/11)
- vol.118:北京冬季五輪で使われたテクノロジー。デジタル人民元から駐車違反まで(4/4)
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- vol.115:ネット広告大手の広告収入が軒並み失速。ネット広告不要論まで。広がるDIY広告(号外)(3/14)
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- vol.107:(付録)トラブル事例から見た中国ECの消費者保護。クーリングオフと覇王条款(1/17)
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- vol.106:電動自転車がいちばん便利な乗り物。コンパクト化が進む中国の都市(1/10)
- vol.105:店舗の未来は「体験」をつくること。これからの主力商品は「店舗体験」(1/3)
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- vol.103:商品はショートムービーで紹介するのが主流。タオバオを起点にショートムービーで展開する興味ECの仕組み(12/20)
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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
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』(2022年11月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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