スターバックスが中国市場で苦境に追いやられています。同業のライバルの売上は増加し、高級コーヒーチェーンも続々と誕生し、顧客が奪われています。そこでスターバックスは中国全土へ3,000店の新規出店計画を打ち出しましたが、現状では無謀な策と思われます。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2022年12月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
なぜスターバックスは苦境に陥ったのか?
みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、中国のスターバックスが無謀とも言える計画を打ち出したことをご紹介します。
スターバックスは中国で5,761店舗を展開し、中国にコーヒーを飲む習慣を根付かせてきた「コーヒーの老師」ですが、現在、苦境に立たされています。
ひとつは、コロナ禍により、スターバックスの強みであるサードプレイス(居心地のいい空間)戦略が、時代に合わなくなったことです。もうひとつは、本格スペシャリティコーヒーのカフェが、大都市では続々と登場し、スターバックスとは次元の異なる美味しさのコーヒーを出すカフェが増えてきたことです(価格ももちろん高い)。
スターバックスは、すでに中国No.1のカフェチェーンではなくなっています。店舗数ではラッキンコーヒーに抜かれ、さらに営業収入まで抜かれる可能性があるところまで追い付かれています。
そこで、スターバックスは3年で3,000店舗の新規出店をすることを発表しました。これでラッキンを抜き返し、No.1の座を奪回することができます。
しかし、300都市3,000店舗という新規出店計画は、自動的に地方都市=下沈市場に進出をすることになり、はたして、スターバックスが下沈市場に受け入れられるのかと危ぶむ声もあります。
下沈市場にまで浸透した外資系飲食チェーンというのは、過去にケンタッキーフライドチキンしかありません。しかし、KFCは中華メニューを揃えるなど、現地化を行なっています。スターバックス文化という欧米文化をそのままで、下沈市場に展開するのは初めての試みになります。
この無謀とも言えるスターバックスの計画は成功するのでしょうか。今回は、スターバックスの下沈市場への挑戦についてご紹介します。
無謀か英断か?スターバックスの中国戦略
スターバックス中国が「2025ビジョン」を発表し、その内容にカフェ業界関係者が驚愕をしています。あまりにも無謀な計画で、「スターバックスが本気を出した」と見る人もいれば、「無謀すぎて失敗する」と見ている人もいます。
この2025ビジョンでは6つの数字が象徴的に掲げられています。1つは今後3年間で3,000店舗を新規出店し、店舗数を「9,000」店舗級にする。中国の「300」都市をカバーする。出店ペースは「9時間」ごとに1軒というペースになるというものです。
これによりフランチャイズ加盟店を含めた従業員数は3.5万人増え、合計で「9.5万人」になる。2022年と比較して、営業収入は「2倍」になり、営業利益は「4倍」にするというものです。
この2025ビジョンの眼目は大量の新規出店です。スターバックスは現在中国に5,761店舗を出店していて、これを9,000店舗にするというのです。しかも300都市をカバーするというのがポイントで、これは地方市場=下沈市場に積極的に進出するということを意味しています。
Next: 地方都市への進出を目指すスタバの危うい戦略