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スタバが中国市場で大苦戦。巻き返し戦略で発表した3,000店の新規出店計画が無謀過ぎる理由=牧野武文

地方への進出を目論むスターバックス

中国では、その人口や経済力などの指標から、都市を6つの等級に分けることが行われています。最も大都市である一線都市は、おなじみの上海、北京、深セン、広州の4都市で、その下の新一線都市に杭州や成都、重慶、武漢など15都市、二線都市が昆明やアモイ、大連など30都市、以下三線都市70都市、四線都市90都市、五線都市128都市と続きます。多くの日本人が知っているのは二線都市までで、三線都市以下になると初めて聞くような名前の都市ばかりになります。この三線以下の都市と農村が一般に「下沈市場」と呼ばれます。

この都市のランキングは、メディアの第一経済の新一線都市研究所が毎年、改訂をしながら発表しているもので、国の統計や基準ではありません。しかし、国家統計局もこのランキングを使って統計を発表するなど、事実上の標準になっています。

六線以下に相当する都市(町)も無数にありますが、ランキングに入れられるのは五線都市までの合計337都市です。スターバックスはこのうちの300都市をカバーすると言っているのです。

つまり、これはスターバックスが下沈市場進出に対して本気を出したということにほかなりません。もし、このビジョンが成功をすれば、中国はどんな小さな街にもスターバックスがある国になります。

vol.114:スターバックス中心のカフェ業界に激震。テーマは下沈市場。郵便局や蜜雪氷城も参戦」では、スターバックスが中国でこれ以上の成長を望むのであれば、下沈市場に進出をする以外に道はないということをご紹介しました。スターバックスは2025ビジョンで、まさにそのことを、多くの人の想像よりも大規模に行おうとしています。

スターバックスの本気は成功するのか?

しかし、あまりに本気すぎる計画であるため、そんなにうまくいくのか?と危ぶむ声もあります。このスターバックスの本気は成功するでしょうか?

1999年、スターバックスの中国1号店が北京市の国際貿易センターに開店をしてから、中国のカフェの歴史が始まりました。当時の中国には、コーヒーを飲むという習慣がなく(インスタントコーヒーはありました)、常にスターバックスが中国のコーヒー文化をリードし、中国にコーヒーの習慣を根付かせたことは間違いありません。そのため、スターバックスは「コーヒー老師」(コーヒーの先生)と呼ばれています。

スターバックスの強みは、コーヒーの味とサードプレイスという言葉で代表される店内空間です。味は主観的なもので、スターバックスのコーヒーが好きな方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、少なくとも、カフェラテという新しいアレンジコーヒーを世界に普及させたのはスターバックスの功績です。日本でも、それ以前からイタリア料理店などで出されていましたが、毎日飲むようなものではなく、ここまで一般的に飲まれるようになったのはスターバックスが出店してからです。

そのような新しいコーヒーを、快適な空間の中で飲み、時間を過ごす。これがスターバックスでした。

Next: スマホ決済への対応の遅れ、ライバルの出現で追い詰められたスタバの現状

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