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スタバが中国市場で大苦戦。巻き返し戦略で発表した3,000店の新規出店計画が無謀過ぎる理由=牧野武文

スマホ決済への対応に遅れたスターバックス

中国でもまったく同じですが、10年経つと、コーヒーの生徒たちが育ってきます。これにより、スターバックスは二度経営的なつまづきを経験します。

最初のつまづきは2018年でした。スターバックスはグローバル経営を行っていて、中国で生活テクノロジーが大きく変わったことに対応をしませんでした。2018年には、すでにスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」を使うのがあたりまえになっていて、財布を持たない、現金を使わない人が多くなっていました。しかし、スターバックスはクレジットカードには対応していましたが、スマホ決済には対応をしなかったのです。この頃、中国の方にスマホ決済のことを尋ねると、「スタバ以外どこでも使えるよ」と答えるのが定番でした。

さらにスマホ決済が普及をすると、モバイルオーダー、フードデリバリーがあたりまえになりました。しかし、これもスターバックスは対応をしなかったのです。これにより、2018年のQ2には、営業収入が前年同期比の-2%減となりました。スターバックスが中国に進出して初めてのマイナス成長です。

強力なライバルの出現

さらにこの年、「瑞幸」(ルイシン、ラッキンコーヒー)が創業をしました。2018年1月1日に北京と上海に出店したラッキンは、5月には500店舗、9月には1000店舗、年末には2000店舗を突破するという驚異的な勢いで店舗数を増やしていたのです。

ラッキンコーヒーは、初めてモバイルオーダーを全面的に活用したカフェチェーンです。原則はモバイルオーダーのみで、決済もオンラインで済ませ、お店に取りにいくというスタイルです。サードプレイスを重視するスターバックスとは考え方が180度異なりましたが、これが受けました。コーヒーを買うのに行列をしなくていいというのが人気の理由でした。

この頃には、コーヒーは出勤前に購入して、それを持ってオフィスに行き、デスクで仕事をしながら飲むものというイメージが定着をしていました。その感覚に、ラッキンはうまくハマったのです。

スターバックスから見ると、現金決済のみ、店内で飲んでもらうのが基本というスタイルが中国人の嗜好とずれ始めたことになり、それが売上にもはっきりと現れるようになっていきました。

ただ、スターバックスという企業はこのような危機に対応し、戦略を修正し、新たな決断をするのが非常に機敏な企業だと思います。アリババと業務提携をし、アリペイ決済に対応、アリババのウーラマ、盒馬鮮生(フーマフレッシュ)のデリバリーリソースを使ってデリバリーにも対応をしました。これで2019年は営業収入を大きく伸ばすことができました。危機を乗り越えたのです。

その後、2020年もコロナ禍により売上を落としましたが、これは仕方のないことで、2021年にはリバウンドで売上を大きく伸ばします。しかし、2022年になり、新型コロナの感染再拡大により再び売上を大きく落とすことになりました。サードプレイスという店内空間を楽しんでもらうというコンセプトが、コロナ禍では合わなくなってしまったのです。

Next: 高級コーヒーショップが続々と開店。狭まるスタバの市場

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