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W杯の勝者は『ABEMA』。賭けに勝ったサイバーエージェント株は買いか?長期投資のプロが企業価値と将来性を徹底分析=栫井駿介

バリュエ―ション

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ABEMAの将来というのは、わからないというのが正直なところです。
一方で、広告やゲームなど利益を出してる事業はあります。

それを踏まえたサイバーエージェント全体のバリエーション。
株価評価がどうなるのかというところを、一応考えてみたいと思います。
ざっくり企業の価値というのは、大ハズレしないという意味での計算はできます。

それが「営業利益の10倍」というものです。
これを計算すれば、大体は間違わない。

ちなみにこの営業利益の10倍という概念を、企業価値についてうまく説明している本に、山口陽平氏の「ほんとうの株の仕組み」というものがあります。
ぜひこちらも読んでいただくことをおすすめします。

それぞれ営業利益の10倍。
全体で見ますと、今ABEMAの赤字が引っ張っている状況なので、単純に営業利益の10倍ではないだろう。

このABEMAは、ジョーカーみたいな感じです。
これから上にも下にも行き得るものと考えてください。
いざ駄目となったら撤退ということも考えられるので、そこは一旦ゼロで考えても良いと思います。

<広告事業>

広告事業、今245億円です。
直近の2022年度に出ていました。
これを10倍すると、2,450億円になります。

<ゲーム事業>

ゲーム事業。
これは直近3期の幅をとりました。
ボラティリティが大きいので、それぐらいは見た方がいいだろう。
2020年度で303億円、2021年度で964億円でした。
これを10倍すると、3030億円から9640億円。

<メディア事業>

メディア事業、これはちょっと算定不能といたします。
算定不能を除くと、合計5,480億円から1兆2,090億円という数字が出てきます。
これがざっくりとしたですね、サイバーエージェントの企業価値というふうに言えます。

ちなみに、一般的に借金がありますと、この数字から借金(有利子負債)を引くことになります。
サイバーエージェントに関しては、借金よりも持っている現金の方が多いネットキャッシュ企業になりますので、これは今計算しないでおきましょう。
正確に言うとプラスになっている。
借金よりも多い分の現金を足し戻すということもするのですが、これに関しては(それをおそらく)ABEMAの事業に投資することが考えられるので、それもまたノーカウントということにさせていただきます。

今の時価総額がいくらなのかということを見ますと、今約6,600億円です。
ちょうどこの幅にはまりつつ、ほとんど下限に近いというところではないかと思います。

この下限とは何なのかを見ますと、かなり手堅いとみられる広告事業。
ちょっとボラティリティはあるけれども、ちょっと保守的に見たときのゲーム事業の利益というところになりますから、まあこれを外すことはないだろう。
従って少なくとも、上限は超えていないということで、割高という可能性はかなり低いと思います。

つまりどういうことが言えるかというと、現在メディア事業は「ほぼ評価されていない状況」。
広告とゲームの中の数字だけで、まとまっているというところがあります。

それはどういうことかというとつまり、ABEMA事業。
これが当たれば(今、最低限ぐらいの評価ですから)それが上乗せされれば、その上乗せ分は丸儲けできるような状況であるのではないか。
もちろんそれが足を引っ張り続けて、さらにマイナスになるみたいなことは考えられます。
しかしうまくいったらプラスは取れる。
そういう状況に見えるわけです。

そして懸念されるのが財務状況です。
ネットキャッシュと言いました。キャッシュフローもしっかり事業がありますから、今のところ大丈夫。
一方で確実にOKと言える銘柄もなくて、今後は成功も失敗も、幅が大きい状況であると思います。

ただかけてみて、面白い会社である。

藤田氏の考え

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この藤田社長、21世紀を代表する会社をつくる。
それに向けて今邁進している状況かと思います。

その方向性として、ABEMAを軸とした価値創造。
新規事業を産む社風、想像力。
これはABEMAにとどまらず、またいろいろやってくれると思います。

そして何より特筆すべきなのが、生粋のギャンブル狂である。
ABEMAの代表的なものとして、麻雀チャンネルがあります。
藤田さんが麻雀はプロ級ということで、そのチャンネルに自ら出演してやっているのです。

先ほどのウマ娘も、まさにギャンブルです。
事業もABEMAがうまくいけば、大当たり。
駄目だったら・・みたいな話。
そのギャンブルの概念を経営に持ち込んだ。
そういう意味で、今後も目が離せない会社だと考えるわけです。

皆さんぜひ投資するときは、単に売りだ買いだという話ではなくて、その売りと買いの中にいろんな幅があるわけです。
その幅をぜひ理解した上で投資すると、皆さん投資がもっと楽しくなると思います。

最終的にその企業や経営者のことが好きだったら投資する。
こういった投資こそが、私が望む投資の姿である。
結局は実体経済と結びついた投資を行いたいというのが私の一つの願いです。

そういったことから、このチャンネルは、投資と経済のチャンネルにしたいという思いがあります。

(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)


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image by: slyellow / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2022年12月13日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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