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日本ブランド神話が中国で完全失墜。無印良品・イトーヨーカ堂ほか中国進出成功企業を軒並み苦境に陥れる“脱日本化”というトレンド=牧野武文

プランド評価が高いのに惨敗した無印良品

最ももったいないと思えるブランドが、無印良品(MUJI)です。MUJIは20代、30代の男女から非常に高い評価を得ています。MUJIの簡素、自由、快適といったデザインコンセプトが、近年の若者層の感覚とうまくシンクロしているのです。そのため、中国人でのMUJIの評価は、ワンランク上の日用品です。それも高級という方向よりも、優れたライフスタイルを送る人が使うという上質感を感じています。

例えば、閑魚(シエンユー)などの不用品取引サービスを見ていると、MUJIの紙製のショッピングバッグが出品されています。知人にちょっとしたプレゼントをする時に、MUJIのバッグに入れて贈ると、センスがいい、ちょっと高級のような雰囲気が出るからだそうです。それほどMUJIのブランドは高い評価を受けています。

しかし、では実際の業績はどうなのかというと、中国のMUJIは苦境に立たされています。コロナ禍でもちろん大きな打撃を受けましたが、MUJIの低迷はコロナ禍前である2015年頃から始まり、2018年にはすでにマイナス成長に入っていました。その状態のところにコロナ禍がやってきたため、中国のMUJIは翻弄をされている状況です。

なぜ、ブランドイメージは高いのに、業績が悪い=売れないのでしょうか。非常にもったいない話です。

新規出店で売上を伸ばした無印良品の悪手

今回は、MUJIの話をきっかけに日本ブランドがどう受け止められているかをご紹介します。また、メイソウ、奈雪の茶、元気森林などは日本企業ではないのに、日本風要素を取り入れることで成長をしてきました。なぜ、このような企業は日本風であることを標榜するのでしょうか。このような事例を通じて、日本ブランドのイメージがどう変わってきたのかをご紹介します。

まず、MUJIの中国での既存店+オンライン売上の推移をご紹介しておきます。明らかに2015年に低迷が始まり、2018年にはマイナス成長となり危機的状況になっていることがわかります。そして、コロナ禍が始まり、激しい乱高下をすることになります。

ところが、MUJI中国の営業収入は、わずかですがこの期間も毎年伸び続けています。これはどういうことかというと新規出店をしているからです。2021年以降は毎年30店舗近いペースで新規出店をしています。

これはMUJIの場合、中国325店舗ですから、1割弱にあたります。店舗を1割増やせば売上は1割増えるわけで、新規出店を続けていけば全体の営業収入は伸びていくことになります。これは上場前の中国のチェーン小売がよくやる手で、ビジネスが成長をしていることを印象づける手法です。

もちろん、MUJIがそんなことをする必要はありませんし、長期計画に沿って店舗拡大をしているのだと思います。そこで、中国の投資家たち(日本の投資家も同じですが)は、既存店売上を見ます。新規出店分の売上を除いて、去年まで存在した店舗の売上だけを見ると、業績が本当に上向きなのか下向きなのかがわかるわけです。MUJIの場合は、この既存店売上+オンラインが厳しい状況になっているのです。

この状態で、新規出店を続けると、全体売上は増えるので、一見成長しているように見えますが、実態は売れ行きが苦しくなり、新規出店コストもかかるため、どこかで身動きが取れなくなります。現在のMUJIは、この袋小路に入ってしまっている印象です。

人気が高いのに売れない理由は「価格差」

では、なぜ人気は高いのに売れないのでしょうか。その理由ははっきりしています。価格が高すぎるのです。それもただ高いのではなく、日本の価格に比べて中国の価格が高いという「価格差」が存在しています。

例えば、「超音波うるおいアロマディフューザー」は日本では5,990円で販売されています。しかし、中国では388元で、これは約7,500円にあたります。今年の11月11日の独身の日セールでは大幅割引をされ310元になりましたが、それでようやく日本の価格とほぼ同じになります。

これはこの商品だけではなく、多くの商品で日本価格の方が1割から4割程度安くなっています。このような情報は、日中双方のECを簡単に閲覧できる現在、誰でも知っていますし、SNSなどでも拡散します。また、中国メディアでもたびたびこの問題が取り上げられます。

MUJIも、以前はこの問題を認識し、2020年までに日中価格差を解消するというようなコメントを出していましたが、コロナ禍の騒ぎによりうやむやになってしまい、いまだに多くの商品で日中価格差が存在しています。

Next: セール以外の期間にMUJIを買うのは情弱の証

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