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日本ブランド神話が中国で完全失墜。無印良品・イトーヨーカ堂ほか中国進出成功企業を軒並み苦境に陥れる“脱日本化”というトレンド=牧野武文

セール以外の期間にMUJIを買うのは情弱の証

MUJIが中国市場を軽視しているわけではなく、おそらく物流か現地法人との契約の問題で解消は簡単でないことなのだとは思います。しかし、多くの人がこの価格差に不満を感じています。「セール以外の期間にMUJIを買うのは情弱」といった空気があり、中には「中国市場を見下している」という不穏な書き込みをSNSにする人たちまでいます。

これにより、セール期間直前になると、SNSには「MUJI打折攻略」(割引攻略)という記事や動画が大量に出回ります。MUJIはセールの時にだけ買うものというのが常識的になりつつあります。

MUJIの運営をしている良品計画の2021年の年報には、中国事業について「近年は業績拡大のペースが鈍化していると認識しています。これは、日常的に商品を購入するには価格がやや高いとの認知や…」という記述があり、MUJIも認識をしていることですが、価格が高いのではなく、日中価格差があることが中国人消費者の印象を悪くしているのです。

MUJIがグローバル価格統一をすれば、中国事業の業績は急速に回復します。実にもったいない話だと思います。

もちろん、良品計画の方々はそんなことはわかっていて、それでも価格差解消ができない難しい問題が横たわっているのだとは思います。しかし、急がないと、MUJIは中国での居場所がなくなってしまうかもしれません。

日本のパクリ企業が急成長

なぜなら、名創優品(MINISO、メイソウ)が業績を急速に伸ばしているからです。メイソウは2013年に創業されましたが、その店舗ロゴはユニクロ風、店舗設計はMUJI風、商品はダイソー風で、トリプルパクリをした中国企業として、日本ではお笑いネタとして取り上げられることが多い日用雑貨小売チェーンです。

その頃から、私はMUJIや日用品雑貨を販売する日本企業は最大限の警戒をすべき企業だと思っていました。実際、店舗数はMUJI(中国)が325店舗に対して、メイソウ(中国)は3,378店舗と10倍以上に急成長をしています。

メイソウは10元(約200円)という価格をひとつの基準にしていて、当初は10元均一ショップのような感覚でした。現在では高価格帯の商品も置くようになっていますが、全体的に低価格をウリにしている日用雑貨小売です。そのため、MUJIの品質とは比べようもありません。単価が安いため、営業収入も店舗数の割には小さかったのですが、2021年の営業収入は良品計画が866.43億円であるのに対して、メイソウは546.92億円まで迫っています。良品計画の63%にあたります。もはやバカにしている場合ではなく、完全なライバルであり、店舗数ではMUJIの方が追いかける立場です

MUJIは一線、新一線、二線と呼ばれる大都市中心に出店をしています。大都市でのビジネスが日中価格差により手詰まりとなると、地方都市に進出をするしかありませんが、地方都市はメイソウのホームグラウンドです。しかも、似たような商品が、品質は別として、価格は1/5から1/10で販売されています。ちょっと地方都市では勝負にならないのではないかと思います。

若い人に話を聞いてみると、メイソウが日本企業ではないこと、他ブランドのそっくり製品が多いこと、品質は比べようもないことなどは多くの人が知っています。しかし、それでもメイソウで買ってしまうのです。

例えば、加湿器が欲しいとします。MUJIでは300元から400元程度します。同じものではなく品質はまったく異なりますが、見た目は同じもののように見えるものがメイソウでは100元以下で販売されています。初めて加湿器を買うのであれば、どれが品質のいい商品かはよくわからないため、いちばん安いメイソウの商品を買ってしまいます。買って失敗をしても、痛くない価格だからです。

Next: 「品質も悪くない」メイソウで消費者は満足している

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