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出生支給1人1000万円、給与倍増、官邸主導からの脱却。衰退の30年から日本を治癒させる3つの特効薬=山崎和邦

賃上げが起きないのは労働者にも責任がある

もう一つは下からの突き上げがないか、あるいは弱いことだ。日本労働組合総評議会(総評)が日本の高度成長とともに盛んになり、日本のバブルとともに消えた。1989年12月に日経平均は最高値を付けた、その年の11月に総評は解散した。そして、日本労働組合総連合会というものがあり、これは筆者に言わせれば狎れ合いの仲良しクラブみたいなものであって、労働運動のリーダーにはなり得ない。賃上げ運動を指導した総評が、1950年に設立されて解散したのは、バブルの最期の年の1989年11月であった。20世紀の日経平均最高値3万8915円は12月30日だったから、ほとんど日本経済の最盛期を見て消滅した。それと同時に解散した。それ以降、日本の賃上げ運動が極めて弱くなった。ここにも問題がある。賃上げは経営者の責任ではあるが、勤労者自身の責任でもある。

繰り返し言うが、賃上げはGDPの60%を占める消費に直接影響する。これをやることによって、GDPは成長する。したがって、分配と成長との好循環はまず賃上げが始めにある。そうすれば必然的に成長力が付く。GDPの6割に賃上げが影響するのだから。

官邸主導で奪われた経済計画

「失われた30年」の後半の3分の2は経済審議会の消滅のように、経済計画を多面的に練る仕組みがなくなったからだ。

この30年間ぐらい、時の首相は官邸主導の名のもとに色々なスローガンを打ち出して一つの政策を標榜するが、いずれも多面的な熟考を経た哲学性があるものとは言い難い。表現は判りやすいけれども、そう言いたい。

例えば、安倍内閣の「三本の矢」「経済を取り戻す」、岸田内閣の「新しい資本主義」などのスローガンを標榜することはいずれも深い熟慮を経たとは言い難い。これは筆者が察するには、2001年の省庁の官邸までは存在した経済審議会という首相の諮問機関を2001年になくして官邸主導になったからに違いない。

日本には高度成長期の始めから経済審議会というものがあり、経済計画という仕組みがあった(計画経済ではなく、経済政策の計画である)。その経済審議会では官僚OB・産業界・労働組合・学界・消費者団体からなる首相の顧問機関としての制度であった。その政策の計画はそのまま閣議決定されて、政府の経済運営の指針となった。例えば、池田勇人内閣の「所得倍増計画」、大平正芳内閣の「田園都市構想」、宮澤喜一内閣の「生活大国への道」などもそれである。これは2001年の省庁再編で消滅させた。

この「経済審議会」の意味は、1)経済・社会の長期的な展望を明らかにし、2)多面的な学者や経営者や労働組合や消費者団体等の議論に基づいた内閣の長期的な経済政策の方針を示すことであった。

また、そこには労働組合もマスコミも入っていたので、国民的なコンセンサスの形成の場でもあった。このようにして、時の内閣は経済政策のスローガンを打ち立てた。全ては2001年の省庁改編で姿を消した。

筆者が本稿で時々述べる経済企画庁もその時に姿を消して、内閣府の中の一部分の組織になり(内閣府の中の経済・社会総合研究所になった)、担当大臣がいなくなった。旧経済企画庁は長官が国務大臣だった。そして政策は政治主導となったから、政治家の能力を越える政策が出てこなくなった。市場経済のもとで政策計画は必要ない。それは「計画経済」、社会主義体制で言うところのものだといった批判があり、官邸主導の名のもとに2001年に消滅させた。失われた30年の後半の3分の2は経済審議会の消滅と経済計画を多面的に練る仕組みがなくなり、時の内閣を構成する政治家の政治家の能力を越えることがなくなった。

自給自足でも日本は復活できる

中国は2010年にGDPグロスで日本を抜いたが、今はドルベースで見れば日本の3倍になった。つまり、日本のGDPはドルベースで見れば、中国の30%弱になってしまった。ところが、民間消費市場の規模では中国の45%はある。日本の企業はこの膨大な国内市場を相手にしているだけで最低限度は食ってはいける。日本は中国と違って、半ば自給自足でやっていける。

半導体の世界シェアが50%から10%に減ってしまったことばかり言うが、技術力によっては日本企業が世界市場の過半数を制しているものがある。ソニーや村田製作所などの電子部品である。ダイキンのヒートポンプ使用のエアコンなども、世界シェアで優位に立っている。日本は半導体の世界シェアで落ち目になったことばかり騒ぐが、その半導体の素材自体は世界市場で躍進している(信越化学・三菱ケミカル・SUMCO)。

日本の輸出というとすぐに自動車を連想するが、自動車ばかりではない。こういう強みがあることを忘れてはならない。──

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<山崎和邦の投機の流儀vol.555 1/22号>

■ 第1部:当面の市況
(1)週末の様相から
(2)日銀、政策決定会合で金融緩和の当面維持を決めた。
(3)今後、何回もある「日銀トレード」
(4)当面、投機筋が仕掛けるタイミング
(5)輸出関連の主力銘柄が買われた日もあった。
(6)著名な為替ストラテジスト7人への緊急為替アンケート
(7)年初から、日本株が出遅れている。
(8)日本では銀行株が昨年来、軒並み新高値をとってきているが、米銀行大手はそろって減益決算を発表
(9)荒天に備え、高配当株を持つ。
(10)「有事のキン」8ヶ月ぶりに高値

■ 第2部:中長期の見方
(1)2023年に抱えるコロナ・ウクライナ侵攻・欧米の利上げ・世界経済の行方などと並ぶ大きなリスクの一つは中国の衰退
(2)米景気、過去50年間でほとんど例外のないアノマリー
(3)防衛費増額の「進め方の失敗」は「国防の決め方・進め方」と同じ失敗
(8)日米同盟は新段階に入った。
(9)アメリカの世紀は終わってない。
(10)宇宙戦争が現実味を増す中国の脅威

■ 第3部;読者との交信蘭

[ 来週号に回すもの ]
〇4月に日銀総裁が代われば、どうなるのか?
〇プーチンは切羽詰まった状態になりつつある。戦術核を使うか?来年3月の選挙をどうするか? 
〇「白紙の乱」が中国を焼き尽くすか?
〇体制の変革はデモよりも、軍事クーデターによる方が多い。

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2023年 セミナー開催のお知らせ

「売るべき時を知り、買うべき好機は逃さない」

2023年の株式市場を取り巻く国内・国際情勢の総括

昨年、85歳という異例の年齢で博士号を取得した、国際コミュニケーション学博士の山﨑和邦が、現在の国際情勢について解明します。台湾問題、米中問題、ウクライナ戦など、地政学リスクが続く2023年の国際情勢について最新の知見を得られるまたとない機会となります。

山崎和邦自身も、昨年は、東電を1月に平均300円で買い7月に平均600円で売るという「従来の方針」で利益を挙げ、「短期売買」では、大阪チタニウムの売買を繰り返し1,400万円の利益を出したり、海運御三家の短期売買で利益を出しました。今年はどのような業界にチャンスの芽があるのか、山崎流の国際情勢の解説から紐解いていきます。

– セミナー内容 –

・Chapter-1: 2023年 国内・世界情勢(13:00-15:00)

・30年間の日本衰退の根本原因は何か?
・支持率で沈みゆく宏池会・岸田内閣の行方
・中国の台湾侵攻、第三次世界大戦が起きる可能性
・GAFAMとテスラを売った巨大な金額はどこへ向かう?
・日本の上場企業の異常状態、上場企業の約半数の会社の株価が解散価値よりも低い
・憲法改正の問題点・国際情勢が与える株式市場と銘柄への影響

など

・Chapter-2: 2023年 そして株式市場の見通し(15:00-15:30)

2023年相場を考える上で、今年以降は海外の要因が100年に一度ぐらいの複雑さで、色々大きな問題が絡み合うという事実があり、また壮年層の投資家にとっては、未経験のインフレ時代が到来する。
いまある国内・国際情勢を解き明かし、今後の株式市場を見通します。

・Chapter-3: オンライン質疑応答 (15:30-16:30)

最後の1時間は、ご参加された方々からの御質問を交えながら、双方向の対話形式のセミナーとします。
参加者皆様と国内外の多くの問題と向き合いながら、「買い場探しの好機」に向けての準備、心構えを、山崎先生を中心に再確認する時間とします。

開催日時
2023年2月11日(土)13:00~16:30
*アーカイブで後日視聴することもできます。

お申し込み
Webセミナー参加費 15,000円(税込)
*【先着30名様】は、後日に山崎和邦氏と直接電話動画ができます(20分間)。

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2023年1月22日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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