fbpx

なぜ65歳以上の肉体労働者が急増?一億総活躍社会は「死ぬまで働け」という政府の高齢者虐待だ=鈴木傾城

誰が「一億総活躍時代」を称賛する?

「一億総活躍時代」が謳われ、老体に鞭打って肉体労働に勤しんでいる高齢層を見かけて「ああ、素晴らしい社会だ。高齢になっても働けるのだから」と称賛する人はいるのだろうか。

むしろ、高齢になっても肉体労働をしなければならない日本というのは、何という国なのだろうか……と思うのが自然ではないだろうか。

ただ、この思いを素直に口に出すと批判が飛んでくることも多い。たとえば、以下のような批判をよく聞く。

「高齢でも働きたい人がいるのだから文句を言う話ではない。高齢者が肉体労働をしても別にいいではないか。肉体労働を見下しているのか?」

確かに高齢層であっても働いている人は大勢いる。政治家なんかは70歳過ぎても80歳過ぎても一向に引退する気配がない人もいる。こういう人は、これまでの人脈や金脈を活かして社会に大きな影響力を与える。

あるいは経営者の中でも「引退なんかまるっきり考えたことはない」と断言し、永久社長で辣腕を奮っている人もいる。

高齢だからと言って無理やり引退しなければならないというわけでもないし、高齢だからと言って能力や影響力が衰えて仕事の質が下がるというわけでもない。どこの業界でもバリバリに働いている高齢層はいくらでもいる。

そういうのを見ると、「高齢でも働きたい人がいるのだから文句を言う話ではない」というのは、確かにその通りだ。異論はない。

一億総活躍時代の強制は政治暴力・政治虐待か

しかし、すべての高齢層は「65歳になっても働きたい、肉体労働でも何でも仕事したい、重い瓦礫を運びたい、夜遅くまでタクシーを運転したい、不眠不休でバスを運転したい」と思っているのだろうか。

彼らは働きたくて働いているというよりも、年金が足りないし、今のままでは生活が成り立たないので、「仕方なく働いている」というのが現状ではないのか。

もちろん、肉体労働の中でもそれが生き甲斐だから好きでやっているという人もいるとは思うのだが、ここ20年で突如として「仕事中毒」の高齢層が412万人も増えたとは思えない。

この20年で日本はますます衰退していて、平均賃金にしてもOECDの平均で韓国にもイスラエルにもイタリアにも抜かれていくような惨状を呈しているのだが、年金もなければ低賃金で貯金もできなかった高齢層が増えて、「労働に追い込まれている」というのが現状ではないか。

昨今は物価が上昇するのに年金はむしろ削減されていき、さらに日本政府は気が狂ったかのように増税路線に走っている。光熱費も政府の無策のせいで爆上げしているのだが、光熱費が爆上げすると製造費も騰がるので、物価はもっと上がっていくことになる。

とすれば、今後もさらに多くの高齢層が「労働に追い込まれていく」のは必至である。それを指して「一億総活躍時代が進んでいる」「高齢でも働きたい人がいるのだから文句を言う話ではない」と言うのはおかしいのではないか。

本当は「働きたい高齢者はいくらでも働いてもいいし、老いて心身ともに疲れた高齢者は節約しながらゆっくりと日々の生活を送っても良い」という選択肢が必要であって、一億総活躍時代を政治家が強制するのはあまりにも傲慢ではないのか。

一億総活躍時代の強制は政治暴力・政治虐待とも言える。

Next: 政府は何をしていた?30年も成長しない日本社会

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー