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プリゴジンの反乱を手引きしたのは誰か?日本では報道されない真実とプーチンの次の一手=高島康司

プリゴジンは治安組織に浸透、ロシア軍の犠牲

現時点では確証はないが、プリゴジンは、警察、軍隊、諜報機関を含む数千人の支持者によって正義の行進が埋め尽くされるよう、一般的な蜂起を望んでいたようだ。もちろん今となっては、蜂起などなかったし、プリゴジンの気の遠くなるような探求に加わりたいと申し出る者もいなかった。

実はこれも知られていないことだが、ウクライナの「特別軍事作戦」の副司令官であるセルゲイ・スロビキンは、「ワグネル」の実質的な作戦指揮官なのだ。そのためスロビキンには、プリゴジンの反乱計画は1カ月以上前に知らされていた。スロビキンはプリゴジンに脅された後、彼に同行することを拒否している。スロビキンは「ワグネル」に、ロシアに入ったり、ロシア人と戦ったりしないよう伝えるビデオを公開した。ビデオの中で、彼は右手に自動拳銃を握って座っている。

さらにこの事件は、無血のクーデターでもなかった。「ワグネル」によって撃墜されたロシア軍のヘリコプターと輸送機では、パイロットと乗組員37人が犠牲になった。

アメリカの関与

しかし、今回の事件でもっとも大きいのは、ウクライナからというよりも、アメリカからの支援を交渉していたという報道である。CIAがウクライナの関係者から十分な情報を得ていたと聞いても、誰も驚かないだろう。CIAは、プーチン政権の転覆を画策していた。

未確認の報告によると、プリゴジンはアメリカに非常に良い取引を持ちかけたという。外部からの支援と引き換えに、彼はロシアを引き継ぎ、西側に方向転換し、ウクライナから去るというのだ。

ウクライナの攻勢が頓挫している重要な時期に、アメリカにとってこの申し出は断りがたいものだった。

予想以上に深刻な状況

これらの情報は、「安全保障政策センター」および「ヨークタウン研究所」のシニアフェローで、ロシアワッチャーとして著名なスティーブン・ブライエンが中心になって集めたものだ。

こうした情報が事実だとすると、今回のプリゴジンの引き起こした反乱は、ロシア国防省と「ワグネル」との争いだけに止まらないことが分かる。

もちろんまだ確証はないが、プリゴジンの反乱を支持する勢力は、軍や警察などのロシアの治安組織に実際にいる可能性が高い。そうした場合、この反乱はプーチン政権を揺るがす規模のクーデターに発展していた可能性も考えられるのだ。

いまプーチンは、自分に反対する政権内の反体制派に対処するという大きな課題を抱えている。 あからさまに名乗り出た者はいないが、「FSB」とプーチンはプリゴジンが誰と連絡を取っていたを知っているようだ。彼らは、それらの個人や組織が信頼できるのか、それともロシアの安全保障によって対処されなければならないのかを判断している模様だ。

プーチンはまた、ロシアの都市で広がっている破壊行為を取り締まらなければならない。この多くがウクライナが送り込んだロシア人であり、彼らは訓練されたプロフェッショナルである。「ウクライナ情報局」によって訓練された可能性が高い。

破壊行動にとどまらず、著名な親プーチン派指導者の暗殺も行われている。こうした事件が「ウクライナ情報局」の関与した可能性はもちろん大きいが、それとともに、彼らと協力している国内の反プーチン勢力の存在も匂わせている。

こうした状況を見ると、やはり今回のプリゴジンの反乱には、深い意味はありそうだ。単に「ワグネル」とロシア国防省の内部対立だけでは片付けられない側面がある。もちろん、プリゴジンのウクライナやアメリカとの内通などはいまのところ確証があるわけではない。しかし、著名な複数のロシアワッチャーが語っているので、可能性は否定できないように思う。

いまプリゴジンの反乱に関しては、プーチンの自作自演説も含め、あらゆる情報がネットでは出回っている。現時点ではすべての情報を実証することはできない。しかし今回の出来事が、ロシア国内の勢力間のなんらかの亀裂と闘争を象徴している可能性は念頭に置いておいた方が良いように思う。

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