吉原高級ソープ嬢に聞く【前編】では、吉原高級ソープ嬢の本田きくさんに業界の女性の「仕事を取り巻く状況」についてお伺いした。そこでは「高級店は稼げるのは誤解」「生き残る秘訣は何か?」「女の子が風俗で賢く稼ぐための戦略」「ソープ嬢として働くのに必要な大前提」「吉原ブランドはほかの歓楽街と何が違う?」など、興味深いお話を聞かせてもらった。
今回は「ハードな業界でいかに自分を消耗させずに生き残るか?」を中心に、ブランディングや仕事の姿勢などを訊いた。ハードな業界でもやっていくスキルは、高級ソープ嬢のみならず、ビジネスマンにも必須である。
本田さん曰く、ソープ嬢はかならずしも「生き残りたい」と思ってやっているわけではない。むしろ「早く稼いで年季をあげたい(引退したい)」という気持ちを抱えて仕事をしている女性が大半であるという。なるほど、身を削る仕事であるがゆえに、そういう女性たちが多くても納得できる。
しかし、そういう女性であっても、ハードな仕事に就いている以上は自分を守るために、その瞬間は生き残らなければならない。ハードな業界でいかに自分を売り込みつつ、いかに自分を消耗させないで年季をあげるのか。【後編】となる本稿では、高級ソープ嬢はそのあたりをどう考えているのかを深掘りしてみたい。(『 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編 』)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
5兆円産業「性風俗」の花形“ソーブ嬢”に鈴木傾城がインタビュー
風俗の世界では「自然体でいる」というのが一番重要
鈴木傾城(以下、鈴木):風俗嬢というのは究極のフリーランスだと思うのですが、自分の意志をしっかり持っていないと生き残れないというのが本田さんのお話を聞いてヒシヒシと感じます。そういう意味では、普通のフリーランスの人たちにも実感としてうなづけたり、参考になるお話も多いです。
本田きくさん(以下、本田):ありがとうございます。たしかに裁量労働からフリーランスに移行する働き方の人って、今わりといると思うんですね。とくに東京とか大阪とか多いと思うんです。そういう制作系のお仕事とか、それこそ出版関係の方とかも多いと思うんですけど、感覚的にはすごく近いなとは思います。
鈴木:ですよね。いろいろ考えないといけないことが多いのはフリーランスも風俗嬢も同じなのだと思います。フリーランスとしては自分の強みを生かして生き残る必要がありますが、風俗の世界でもそうですか?
本田:そうですね。風俗の世界でなら「自然体でいる」というのが一番重要かなと思います。
鈴木:自然体ですか?
本田:やっぱり慣れないキャラことをずっと演じるのってすごいストレスなので、自分がずっと同じスタイルで生きてきてて、これがやりやすいってものがあるのだったら、それをやったほうが生き残りやすいんです。たとえば、強気な女の子だったら人には上からものを言うほうが物事進めやすいとかあると思うんです。人には命令口調のほうがやりやすいんだったら、命令口調で行ったほうがいいです。
鈴木:SMみたいなものですか?
本田:SMじゃないにしても、お姉さまキャラ。スナックとかでも、ニューハーフのバーとかよくあると思うんですけど、「どうしたの、しけたつらして」みたいなのがありますよね。毒舌じゃないですけど。そっちのほうがやりやすいんだったら、客の分母が減ってもそのほうがいいです。
鈴木:なるほど。むやみに客の分母を増やすよりも自然体でいることのほうが大切だということですか。それでは客の分母が大きいキャラはどういうものなのですか?
本田:王道で行くなら、やっぱり三つ指ついて「本日はお選びいただきありがとうございます」「お部屋は暑くないですか?寒くないですか?」と、お客様にお礼といたわりの言葉をかけるキャラですね。上品で謙虚。接客の基本姿勢かと思いますが、優しい女の子っていうのはどうしても人気ですよね。王道で行くならそこに当てはまったほうが分母は増えます。ただ、お客様の分母は増えるけど、それが本当に嫌で嫌でしかたがないんだったら、ある程度自分のファンをつけた段階で、ちょっとずつ自分の顔を出していってもいいと思います。
鈴木:そうなのですね。要するに、自分の個性をきちんと守らないと長続きしないってことですか?
本田:はい。型にはまったお仕事だったら全然いいと思うんですけど、この仕事は、やっぱりすごく近い距離で人と人とで接触するので。そうすると、自然体でないと苦しくなるんですよね。
高級ソープになればなるほど自然体でなければならない?
鈴木:自分の個性で生きるというのは、たしかに言われてみるととても重要なことであると思います。風俗の場合は、人と人の濃密な世界なので、なおさら自然体であることは生き残りに重要なのですね。
本田:とくに高級店になるほど一緒にいる時間が長くなりますので、なおさらですね。
鈴木:高級店になるほど時間が長くなるというのはどういうことですか?
本田:大衆店・格安店と高級店の違いは、金額のほかに時間があって、大衆店・格安店だとお客様は40分、50分、60分、70分、80分って細かく選べることなんです。その子とどれくらい長い時間を一緒に過ごして、お金を払うかっていうことを選べるんですけど、高級店の場合は最初からだいたい110分とか120分なんですね。110分、120分を一口として、二口、三口って買う人もいます。その場合って6時間一緒にいることになります。
鈴木:あの狭い空間で6時間一緒にいるんですか?
本田:いえ、6時間の場合は外出OKなので、だいたいどこのお店もそのルールをやってると思います。最初はお店で集合して、そのあとに外に行こうかって言って出ることもあります。外に行ってデートしたり、ご飯を一緒に食べたり、それこそ、いつもとは違う場所でちょっと仲良くするっていうことですね。