世界金融経済の神経機能に大波乱を巻き起こす英国のEU離脱
ドイツ覇権を最も不快に思っている国はイギリス、フランスであろう。
かつて英国・サッチャーはフランスに「ゲルマン人に尾を振るプードル犬に貴国は成り下がったか」と悪態をついた。フランスは元来が“外交の国”だけあって上手く立ち回ろうとしているが、英国・スイスは最初からユーロ圏には加入しなかった。
そうして我関せずと超然としているうちに、政治・経済の権力はドイツに集中することになった。
かつて筆者は、発生史的に見てEUの精神はヤワなものではないと考え、本稿でも数年前に
そう書いたことがある。しかし今は、ドイツへの権力集中をなんとかせねばEU存続の基本精神が崩壊するところまできている。
英国はユーロ圏には入ってないが、ドイツへの権力集中化を快しとしないジョン・ブルの意地がある。
もっとも、英国自らEU離脱となれば、経済的には損をすることを英国民なら皆が知っている。 筆者の英国通の友人などは、プラグマティズムが大好きな英国の国柄はジョン・ブルの意地だけではやって行けないことを承知していて、国民投票はEU残留に決まるだろうと言うが果たして如何なものか。波乱含みである。
英国がEU離脱となれば、「トランプ大統領の出現」以上に世界金融経済の神経機能に大波乱を巻き起こすであろう。なにしろ、ロンドン市・シティはNYウォール街に次ぐ世界の金融センターである。
かつて中国株暴落の折、筆者は本稿で「中国株は地方限定的で、世界金融の神経機能に大きな衝撃はない。上海株暴落は中国経済の先行き、実態経済への懸念を反映したものだ」と述べたが、それと引き換え英国のEU離脱は、世界の金融機能に対して直接的な衝撃を与えるであろう。
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