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実は中国が圧倒的。日本では報道されない世界の最先端テクノロジー開発状況、分野別ランキングから見えた3つの真実=高島康司

「オーストラリア戦略政策研究所」

このシンクタンクとは「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」である。ここは、70%の運営資金をオーストラリア国防省を始めとした政府の省庁から得ている政府系のシンクタンクである。アメリカには「戦略国際問題研究所(CSIS)」というシンクタンクがあり、米政府に安全保障や軍事情勢の分析を提供し、アメリカの外交政策の立案に大きな影響力を持っているが、「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)はこれとほぼ同じ役割をオーストラリアで果たしているシンクタンクだ。

ここは今年の3月に「ASPIのクリティカルテクノロジーのトラッカー、未来のパワーをめぐるグローバルな競争」というレポートを発表した。レポートの内容は9月の後半にさらにアップデートされている。これこそ、第4次産業革命の先端的テクノロジーの世界的な開発状況を俯瞰したレポートである。いまのところ、世界でもこれが唯一のものかもしれない。全文は以下からダウンロードして読むことができる。

・ASPIのクリティカルテクノロジーのトラッカー、未来のパワーをめぐるグローバルな競争
https://www.aspi.org.au/report/critical-technology-tracker

このレポートは、第4次産業革命の中核となる44の産業分野における世界の開発状況をリスト化したものである。各技術に関連する合計220万件の論文、さらに、様々なキャリアステージ(大学、大学院、就職)における各国間の研究者の流れに関するデータを収集・分析し、各分野をリードする国をランク付したリストである。

また「技術独占リスク」とは、その分野の首位となっている国がテクノロジーの供給するリスクを「低、中、高」の3段階でランク付したものだ。もし中国が首位のテクノロジー分野で「技術独占リスク」が高い場合、この分野のテクノロジーは中国の供給に全面的に依存することになる。

44の先端的テクノロジーの開発状況

以下が、44の分野のグローバルな開発状況である。

先端産業分野  主導国   技術独占リスク

<最先端素材と製造業>

1. ナノスケール材料と製造 中国  高
2. コーティング      中国  高
3. スマート素材      中国  中
4. 先端複合材料      中国  中
5. 新規メタマテリアル   中国  中
6. ハイスペック加工過程  中国  中
7. 高度な爆薬とエネルギー材料 中国 中
8. 重要鉱物の抽出と加工  中国  低
9. 先端磁石と超電導体   中国  低
10. 先進保護技術      中国 低
11. 連続フロー化学合成 中国 低
12. 積層造形 中国 低

<人工知能、コンピューティングと通信>

13. 高度無線通信 中国 高
14. 高度光通信 中国 中
15. 人工知能 中国 中
16. ブロックチェーン技術 中国 中
17. 高度なデータ分析 中国 中
18. 機械学習 中国 低
19. サイバーセキュリティ 中国 低
20. 高性能コンピューティング 米国 低
21. 先端集積回路の設計と製造 米国 低
22. 自然言語処理 米国 低

<エネルギーと環境>

23. 電力用水素・アンモニア 中国 高
24. スーパーキャパシタ 中国 高
25. 電気と電池 中国 高
26. 太陽光発電 中国 中
27. 核廃棄物管理とリサイクル 中国 中
28. 指向性エネルギー技術 中国 中
29. バイオ燃料 中国 低
30. 原子力 中国 低

<量子テクノロジー>

31. 量子コンピューティング 米国 中
32. ポスト量子暗号 中国 低
33. 量子通信 中国 低
34. 量子センサー 中国 低

<バイオテクノロジー、遺伝子技術、ワクチン>

35. 合成生物学 中国 高
36. 生物学的製造 中国 中
37. ワクチン・医療対策 米国 中

<センシング、タイミングとナビゲーション>

38. フォトニックセンサー 中国 高

<防衛、宇宙、ロボット、輸送>

39. 先進航空機エンジン 中国 中
40. ドローン、協働ロボット 中国  中
41. 小型衛星       米国   低
42. 自律システム運用技術 中国   低
43. 先端ロボット技術   中国   低
44. 宇宙打ち上げシステム 米国   低

これを見て驚くかもしれないが、44分野のうち中国が37分野で首位である。アメリカが首位なのは、半導体に関連した7分野だけであった。そして8つの分野では、中国はテクノロジーを独占している。つまり、世界はこれらの分野では、中国の供給するテクノロジーに全面的に依存しているということである。

Next: 圧倒的な中国。では、ほかの国のランキングと開発状況は?

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