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GPIFが「空売り勢」の味方に?外国株貸付再開で知っておくべき3つの重要ポイント。日銀のマイナス金利解除は日本経済の転換点か=Team xoxo

18日・19日の両日に開かれる日銀会合直前に出た「マイナス金利解除」のリーク報道が注目を集めています。マーケットのリアクションをみると、織り込んでいた向きが買い戻したのか、米国株式指数とすこし違う動きをしました。日本株だけでみると、米国より早く金融政策の変更が現実になるかもしれないこのタイミング。今月20日は祝日ですから、19日はいつも通り休み前。マーケットは休み前に動くというのが定説ですから、今回もそうなりそうですね。月曜日と火曜日前場は思惑含みでボラがでるかもしれません。(『 元外資系レジェンズ Team xoxo あなたに寄り添う投資情報 元外資系レジェンズ Team xoxo あなたに寄り添う投資情報 』)

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プロフィール:Team xoxo
元外資系金融機関出身3人で結成した『あなたに寄り添う』をテーマに金融リテラシー向上で人生を楽しむお手伝いを目標にするチームです。今回はかえるさんが執筆しています。

かえるさん:証券歴27年だがTeam xoxo代表兼癒し担当。サラリーマン生活のそのほとんどが欧米外資系証券だが実は大手日系証券会社出身。地方個人営業から外資系証券でのマネジメント業務までありとあらゆる証券業務を日本とロンドンで経験。趣味は食とクルマ。

ロン:証券業界歴37年でTeam xoxoの精神的支柱兼ご意見番。セールストレーダーとして外資系証券の第一線で活躍。スモールキャップアナリストがキャリアスタート。それゆえに銘柄発掘と企業分析が得意。趣味はスキー、ランニング、登山とベイスターズ。

JB:業界歴20年以上でTeam xoxo唯一のバイサイド出身。日系・外資系資産運用会社におけるグローバル株式ファンドマネジャー経験。現在は軸足の半分を海外に置き、個人投資家や中小企業支援。保守的取引と積極取引のバランス感覚に定評。

日本経済の転換点となるのか?

マーケットが転換点に差し掛かるかどうか、非常に微妙な時期に入っていることがX(旧Twitter)のタイムラインを見ているとよくわかります。

  • 買い方の涙ぐましい買い煽り系投稿
  • 売り方のここぞとばかりの弱気投稿

マーケットって不思議なもので、そんな小さな力で動くものではなくもっと大きなフローで決まるもの。折しも日銀がゼロ金利政策を解除するかもしれないという、まさに日本経済の転換点。世界中の有名投資家がこのタイミングでトレードしてないわけありません。個人投資家歴の短い僕にはなかなか理解できないのですが、人間金がかかると必死になるというか、人間の本性のようなものが見えて非常に興味深いです。

買い煽ろうが売り煽ろうが所詮SNS上の話。誰も責任なんて持たずに勝手につぶやいているだけですから、それを真に受けたりする人もいないとは思いますが、投稿する方はぜひ間違った情報だけは流してほしくありません。

「機関は売り買い両建て…」そんなとあるXの投稿見ました。確かにそういうことはあるのですが。買いの根拠はある株の大株主リスト、売りは多分空売りネットか何かだと思いますが、よく見るとエンティティが違うものを同じと書いている訳です…。僕からするととても痛い投稿なのですがリプをみると「貴重な情報ありがとうございます」とか「見方知りませんでした」なんて書いてある…。そんななか先週ふと日経新聞の報道が目についたので、まとめを書きたくなりました。

実は「GPIF」の公式サイトがかなり役立つ

今年に入って一度GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の記事を書きましたが、やはり「クジラ」の印象以上に、個人投資家の方はGPIFの事をよく知らないのだなというのが僕の印象です。実は、GPIFの公式ホームページは非常にわかりやすく、ぜひ一度見ていただきたいほど。そもそもの年金行政の事からいわゆる初心者の基本的な質問にもきっちり答えています。

また、公的機関であることもありポートフォリオで保有している銘柄リストも開示しているし(年度ごとになるので現状保有している銘柄とは異なっています)、実は様々なレベルの方が見てそれぞれが理解できる、また必要としている内容が得られので、非常に秀逸な公式ホームページだと僕は思っています。日銀のETF運用と比較できるかはわかりませんが、あちらは非常にわかりにくくデータしか取れませんが、こちらではロングオンリーの運用とは何かすべて勉強できます。まあ日銀はもう買わないですし過去のもの?

GPIFが外国株式貸付を再開する意味とは?

2021年時点では、GPIFは日本株の約7%を保有していると言っています。外国株もほぼ同金額保有していますが、占有率はなかなかわかりにくいです。

2023年12月末現在の資産割合

2023年12月末現在の資産割合(GPIF公式ホームページより)

GPIFは株式の自家運用をしていません。それ故、運用機関を選定し、その機関に資金を委託し運用させています。その運用先を決めるのはGPIFの非常に重要な業務の一つ。つい最近もそれに関して大きなニュースがありました。運用機関はあくまでも運用アドバイスをする機関、実際の保管業務や資金のやり取りは信託銀行(カストディアンバンク)が執り行っているため、主体別投資家動向でGPIF始め準公的や企業年金は信託銀行にそのフローが現れるのです。
※最近のGPIFはかなり機動的に運用していますね。主体別の信託の数字みるとこの上昇局面でかなり売った主要な売り手だったとわかります。運用が洗練されてきています。

通商産業省の資料の図では、アセットオーナー年金基金→アセットマネジャー信託銀行&投資顧問会社の流れがGPIFに該当します。

通商産業省の資料より

通商産業省の資料より

洗練されたGPIFの運用。外国株貸付再開の重要なポイント3つ

さて、GPIFの外国株貸付再開のニュースの重要なポイントは

  • なぜ再開するのか?
  • 以前はなぜ貸付していたのに止めたのか?
  • 日本株ではなぜ貸付しないのか?

主にこの3点だと思います。

実は、ここに「スチュワードシップコード」の考え方や「コーポレートガバナンス」に対する考え、さらにそれら実現のための議決権行使の話が絡み単純にやるやらないという話ではないのです。スチュワードシップコードとコーポレートガバナンスコードの関係性について、JPXの開示資料でもわかりやすい文献がたくさん出ています。

日経の記事にも書いてありますが、GPIFは日本株の貸付をしたことはありませんが、外国株の貸付はしていました。しかし、2019年対話や議決権行使で投資先の企業価値を高めるスチュワードシップ活動との整合性や乱用への懸念を指摘する声があり停止していました。ここに指摘する声がありと書いてありますが、実は前CIOだったM氏がほぼ独断で止めてしまったというのが本筋のようです。

何故なら…僕の過去記事を見ていただければわかりますが、彼はテスラのイーロン・マスク氏と非常に仲が良く 、マスク氏がショートセリング(空売り)をすごく嫌がっていることが有名だったので、それにこたえる形でGPIFの外国株貸付を止めてしまったのです(当時GPIFはテスラ社の大株主の1社だった)。当然マスク氏は大喜び、M氏はその代わりにテスラ社の社外取締役のポジションと巨万の富が約束されたというオチ(のようです)。200兆円以上のお金を預かる世界最大のアセットオーナーが、CIOの私利でこんな決定されてしまう……一番ガバナンスが効いていなかった気がするのですが。

実際に報じられているようにGPIFは以前外国株貸付で年間120億円程度の収益があったとのこと。皆様すでにご理解いただけると思いますが、株券を貸し付けると信託銀行経由でヘッジファンドの空売りやアクティビストの議決権行使に使われ、その間GPIFに議決権はなくなります。議決権を取り戻す仕組みができたためGPIFは外国株式の貸付を再開するとのこと。この判断をするために、GPIFは株価へのインパクトを相当分析したようです。

日本株と同様、GPIFは外国株式も基本的にはパッシブ中心の運用。向こう100年先を見通した超長期型運用をしています。もちろん資金の出入りや株価の変化や指数構成銘柄の入れ替えでリバランスはしているものの、コア銘柄の大部分はほぼ動かしていない状態。そうであるならばその株券を使って収益を得ようと考えるのは当然の事。その収益は最終的に年金運用の安定化につながるわけです。

僕は議決権行使などの仕組みが出来ているならば、日本株でもやればよいと思っています。先ほど書きましたが、最近のGPIFの運用は洗練されてきています 。議決権が株主総会で行使できる状態が担保されるのであれば将来の貸付も十分に考えられます。ただ事情が分からずにヘッドラインだけ流れると、それがヘッジファンドの空売りに使われる点に関しては外部からいろいろ言われかねません。だってXをみてると、現物株を貸し出してお金をもらおうとするだけで外野でがやがや言われるんですよ。

僕はそんなのお金になるなら貸し出せばよいと思いますよ。そもそも投資しているのですから1円でも稼げるなら稼がないと!日本株の7%以上を保有しているGPIFが日本株の貸付開始したら何を言われることか。そこまで議論は進んでいませんが慎重に進める必要が有りそうです。

Next: 「売り豚」なんて言わせない?ショート戦略も取り入れるべき理由

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