<原因その2:ヤクルト1000>
元々なぜここまで株価が上がっていたかというと、「ヤクルト1000」によるものです。
一時はヤクルト1000が手に入らず、入荷されたら即売り切れてしまうほど熱狂的なブームとなりました。
なぜヤクルト1000がこれほど足りなくなっていたかというと、製造能力が追い付いていなかったからです。
たくさん作れていなかったので、人気の割には思いのほか売上を出せていませんでした。
しかし、人気は高いからたくさん作れるようになった時には多くの人が買うだろうという期待値もあって株価が上がっていたところがあります。
直近でようやく生産能力が増強され、たくさん作れるようにはなりましたが、工場を建設している間に、「ピルクル」などライバル社の商品でヤクルト1000と同様に“睡眠の質を改善する”効果を謳ったものが発売されました。
競争が発生してしまう部分に懸念を持たれているのではないかと思います。
ヤクルト1000の熱狂がどこまで続くのかということがヤクルトの大きな懸念事項となっています。
長期投資には適した銘柄か
長期投資の観点では、ヤクルト1000ブームは必ずしも本質ではないと思っています。
ヤクルトレディを通じて商品を売り続けること、そしてそれを海外に広げて、ヤクルトを飲んでくれる人を世界で増やしていくということがヤクルトの戦略なので、大筋ではブレていないということになります。
ヤクルト1000単体ではもしかしたらブームが終わってしまう可能性がありますが、こうやって付加価値商品を作ればそれが売れて業績が上がるという手ごたえを感じられた状況だったのではないかと思われます。
2023年初めの頃は業績も好調で、高い目標を掲げたものの、今そこに達していないということで株価下落の要因となっていますが、今期は増収増益を計画しているようです。
中国の立て直しには時間がかかるとは思いますが、時間をかけることができるということもヤクルトの強みであるので、そこまで心配する必要はないと私は考えています。
これまでの成長率を見ると、直近ではヤクルト1000が好調だった分大きく伸びていますが、5年・10年の平均成長率は7%前後となっていて、基本的には5~10%の成長を続けていく会社だと思われます。
長期投資が前提で、目先の大きなリターンを見込む必要がないのであれば、十分適した銘柄だと私は考えます。
それに対して今のPERは15倍ほどで割高感はありません。
ヤクルト1000が盛り上がったころはPERも30倍くらいあり、それが今落ちてきているのですが、過去5年の平均では24倍くらいであり、その意味では根本の部分が崩れているという状況ではないと思われ、過去のPER水準から考えても今は割安に見えます。
PBRも過去最低水準です。
問題はどこで株価の下落が止まるかということですが、チャートを見るとそろそろ底が来てもおかしくないように見えます。
株価の動きは予想できないのであまり真に受けないようにお願いします。
ヤクルトの言い分としては、ヤクルト1000はこれまで商品が足りなくて積極的な営業活動ができなかったけれども今後はそれができるようになり、売上が伸びていくということです。
どう転ぶかは分かりませんが、状況を見ながら買うタイミングを探ってみるのも良いかと思います。
そろそろ海外の売上が50%を超えるグローバル銘柄ですし、インフレにも比較的強い銘柄かとも思いますので、注目してみると良いかもしれません。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2024年6月17日号)より
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。