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トランプ暗殺未遂で劇的に変化したアメリカ人の精神性。支持者以外も真顔で「神の御業」と言い放つ=高島康司

神の申し子となったトランプ

トランプを神格化するこの精神的な変化がどのくらい大きいのか、7月16日に行われたタッカー・カールソンのインタビューを見るとよく分かる。インタビューの対談相手は、共和党全国大会でバンド演奏した福音派のカントリー・ミュージシャンのジョン・リッチだ。

タッカー:速報です。ドナルド・トランプの機密文書訴訟を棄却。アイリーン・キャノン判事は、月曜の判決で、機密文書訴訟を却下した。ジャック・スミス特別顧問の任命は、憲法違反だそうです。まあ、そういうことだ。ドナルド・トランプが次期大統領になることが明白になるように、3日間の間にすべてが変わったようだ。現時点では間違いない。未来を占うことができる範囲では、トランプの勝利ほとんど疑う余地はない。

ジョン・リッチ:まあ、彼らは彼を殺そうとした。

タッカー:そう、そう。そうなんだ。

ジョン・リッチ:暗殺は失敗したんだ。あるいは神がトランプに首を傾けさせたから失敗した。

タッカー:それから4分もしないうちに、イーロン・マスクがトランプの支持を表明した。また、ビル・アックマンは生涯民主党員だが、トランプ支持を表明した。突然、すべてが変わったような感じだ。そうだ 一瞬だ。

ジョン・リッチ:さて、神がこれほどはっきりと姿を現すと、最大の論敵でさえそれを否定するのは難しい。彼らはこう言う。神がドナルド・トランプの頭を回転させるのを、銃弾が通り過ぎる直前の、文字通り一瞬の出来事だ。つまり、もし彼がまだこちらを見ていたら、銃弾は彼の頭部を打ち抜いていた。彼がこっちを向いていたら、打ち抜かれていたんだ。私たちはただそれを見ていた。つまり、神がその存在を知らしめたのだ。つまり、可能な限り大きな物語で。そして全世界がそれを見た。だから今、人々は、よし、信じよう、信じよう、となったわけだ。

タッカー:本当に、その通りだ。その通りなんだ!我々は歴史の真ん中にいるような気がする。アメリカは映画だ。アメリカは映画のようなもので、どんな結末を迎えるのか見当もつかない。

ジョン・リッチ:そうだね。神の啓示が出るタイミングは、私にもわかりません。こんなこと、全部わかるわけがない。数日前に私の曲が出て、それからこんなことが起きて、あんなことが起きた。霊的な戦いがトレンドになっていて、多くの人がそれについて話している。それで私はこう思った。わかった。つまり、このことが起こっている今、音楽的な要素が浮遊しているようなものだと書かれているわけだ。そんなことが起こるような偶然は、この世に存在しないんだ。

タッカー:偶然があると思いますか?

ジョン・リッチ:神に偶然はないと思う

タッカー・カールソンは保守派ではあるが、キリスト教原理主義の福音派ではまったくない。左派やリベラル派などの人々とも対話をして、価値観の違いを調整できる人物だ。そのカールソンが、「神がこれほどはっきりと姿を現すと、最大の論敵でさえそれを否定するのは難しい」というリッチの発言に「本当に、その通りだ。その通りなんだ!」と言い、トランプが今回の暗殺事件を逃れたことができたのは、神の力であると感じているのだ。

アメリカは神との契約で建国された国

今回の事件に神の存在を感じているのは、カールソンだけではない。実に多くのアメリカ人が同じような感覚を持ったようだ。それというのも、アメリカは神との契約で建国された特殊な国家であるという集合的な感情がアメリカでは広く共有されているからだ。これは、アメリカこそ「マタイによる福音書」に予言された「丘の上の町」なのだという信念である。「マタイによる福音書」には次のようにある。

「あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。また、あかりをつけ、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。」 ( 「マタイによる福音書」五章一四から一六節 )

これは、アメリカこそ世界を神の光りで照らす灯台の役割を果たすべき理想国家だということだ。

一方、アメリカは神との契約で建国された国ではあるものの、神への信仰を忘れ、欲望と罪にまみれた状況にある。権力欲にまみれたワシントン政界、ウォールストリートの金融資本、同性愛や堕胎の容認、コントロールの効かない物質主義などが、神との契約を逸脱したアメリカの象徴である。そして、なによりもグローバリゼーションこそそうした諸悪の根源なのだ。

アメリカを先の「丘の上の町」の本来に軌道に戻すためには、アメリカ国民の罪を悔い改めさせ、改心させなければならない。それは、キリスト教の原理を基本として、アメリカ社会を再構築することにほかならない。

そして、暗殺を奇跡的に逃れることのできたトランプこそ、堕落した現代のアメリカを「丘の上の町」としての本来の軌道に引き戻すことのできる救世主なのである。共和党大会のトランプはこれまでの闘争的なスタイルはなく、静かで神妙な態度だった。おそらく、トランプ自身が神の奇跡を感じているのだろう。

もちろん、暗殺未遂事件の前から、福音派を中心にしてトランプを救世主として崇める動きはあった。しかしながら、奇跡的に回避できた暗殺に神の意志を見て、トランプこそ救世主であるという確信は、既存のトランプの支持層を越えて広がりつつある。

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