トランプの暗殺未遂事件が起こった。重要な事件なので、2回に分けて掲載する。今回は前半である。これはアメリカを決定的に変える歴史的な事件になった。アメリカでは精神的な変化が起こっている。日本ではこれは報道されていないので、詳しく解説する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
トランプの暗殺未遂事件で何が起こっているのか?
トランプの暗殺未遂事件が起こった。これは大統領選挙のみならず、今後のアメリカの歴史を左右することにもなりかねない決定的な出来事になった可能性がある。これを巡る状況は日本でほとんど報道されていないので、今回はこれを詳しく紹介する。
2024年7月13日午後6時15分ごろにて、2024年アメリカ合衆国大統領選挙のためにペンシルベニア州バトラーで開かれた共和党の選挙集会で、トランプが演説をしている最中、突如複数回の発砲音が響き、トランプは右耳上部を押さえながらその場にしゃがみ込んだ。
銃撃の直後に、シークレット・サービスの職員たちは即座に壇上に駆け上がってトランプを取り囲んだ。トランプは右耳から血を流しながら立ち上がり、少しの間呆然とした後に群衆に向かって拳を突き上げ「Fight(戦え)!」と繰り返し叫び、職員たちに囲まれながら車まで退避した。トランプの報道担当者はその後のトランプについて「彼は元気で、地元の医療機関で手当てを受けている」と発表した。
一命を取り留めたトランプは、自身の「X」のアカウントで「ヒューヒューという音と銃声が聞こえ、すぐに弾丸が皮膚を突き破るのを感じた」「多くの出血があり、何が起きたか理解した」などとつづった。また、トランプの陣営は11月の大統領選に向けた選挙運動を継続する方針を明らかにした。
銃撃は地元の介護施設で働く20歳の青年、トーマス・クルックスの単独犯行とされた。銃撃の動機は分かっていない。クルックスはキャンペーン会場の同じ敷地内にある137メートル先の建物の屋根からトランプを狙撃した。
アイコンとなったトランプと勢いづく共和党
シークレット・サービスに囲まれ、右耳の一部から出血したトランプがこぶしを上げて立ち上がり「ファイト!」と観客に叫ぶ画像はすさまじい勢いで拡散し、トランプこそがアメリカを率いる強いリーダーであるとの印象を強めることになり、トランプ陣営を勢いづかせている。老齢のため大統領候補辞退を迫られているバイデンとは対象的だ。
この暗殺未遂事件後、民主党は苦境に立たされている。トランプが銃撃された背景には、民主党のトランプ排除を激しく叫ぶキャンペーンがあったとして批判されている。そのため民主党は、トランプの批判を控えており、これが選挙キャンペーンの勢いをそぐ結果になっている。
一方共和党は、さらに勢いづいている。トランプ前米大統領が機密文書を持ち出したとして起訴された事件で、フロリダ州連邦地裁のキャノン判事は15日、訴えを棄却する衝撃の決定を下した。トランプが抱える多くの訴訟の中でも、この機密文書持ち出しがもっとも重大な犯罪になると見られていた。これが棄却されたことは、トランプ陣営にとっては大変に有利だ。選挙キャンペーンはこれから勢いづくことは間違いない。
イーロン・マスクほか相次ぐ「トランプ支持」の表明
しかし、暗殺未遂事件以降のトランプのアイコン化は、大統領選挙という文脈をはるかにこえた精神的な影響をアメリカ国民にもたらしている。これは日本ではまったく報道されていないことだ。
それというのも、今回の銃撃事件はほんのちょっとしたタイミングのずれでトランプが命拾いしたことははっきりしているからだ。いわば、トランプは奇跡的に助かったのであり、むしろここで殺害されていた方が自然であった。以下はSNSの「X」に投稿された銃撃時の動画だ。銃弾が右頭部を直撃する直前に顔を左に逸らした結果、右耳の上部を銃弾がかすめたことが分かる。
これを見ると分かるが、まさにトランプは奇跡的な出来事だったことが分かる。さらにトランプは銃撃後、右こぶしを高らかに上げて「ファイト」と叫んだことは、トランプこそがアメリカを救い、本来の姿に戻すために神が遣わせた使命のある人物であるとの確信を生んだ。この確信は拡散している。
これまでトランプに対して慎重な姿勢を見せていたイーロン・マスクは銃撃事件以後、トランプの全面的な支持を表明し、毎月71億円の寄付をトランプ陣営に行うと約束した。また、ウォール・ストリートの大御所で民主党の熱烈な支持者であるビル・アックマンは、自分がこれからトランプを支持することを「X」で宣言した。暗殺未遂事件以降、トランプ支持はいわば熱病のように拡散している。