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なぜ原宿に中国企業がこぞって出店するのか?人気の4社で異なる海外戦略。日本人よりも原宿をうまく活用できる理由=牧野武文

なぜ中国企業は原宿に出店するのか?

では、中国チェーンの「蜜雪氷城」、「SHEIN」、「ポップマート」、「アンカー」はどのようなねらいで原宿に出店をしているのでしょうか。それぞれの企業については、以前のメルマガでご紹介をしていますので、そちらも併せてご参照ください。

・蜜雪氷城
vol.087:洗脳神曲「密雪氷城」の背後に隠されたプロモーションロジック
vol.184:爆速成長するドリンクスタンド「蜜雪氷城」。その考え抜かれたBtoBtoC型フランチャイズの仕組み

・SHEIN
vol.153:SHEINは、なぜ中国市場ではなく、米国市場で成功したのか。持続的イノベーションのお手本にすべき企業

・ポップマート
vol.116:盲盒のヒットで生まれた大人玩具市場。香港上場を果たしたポップマートと追いかける52TOYS

・Anker
vol.121:ライブコマース時代の商品品質とは。配送・サポートはもはや重要な品質の要素

・海底撈
vol.203:コロナ禍、物価高騰、消費不況が連続して襲う飲食業。火鍋チェーン「海底撈」はどうやってV字回復に成功できたのか

今回は、中国企業が原宿に出店をする理由とその戦略についてご紹介します。

カフェチェーン「COTTI」の戦略

ガチ中華は、中国人の中国人による中国人のための飲食店が基本戦略で、中国人が利用するのを見て日本人も利用することを期待するというのが成長戦略になります。もちろん、日本人がくることを期待していないというガチのガチ中華もあれば、積極的に日本人を取り込みたいと考えるライトなガチ中華もあります。先ほどご紹介した小肥羊、海底撈などはその傾向がありますし、蘭州ラーメンやマーラータンのチェーンの多くはむしろ日本人ターゲットの比重が高いように見えます。

この基本戦略と成長戦略をバランスよく実行しているのが、カフェチェーン「COTTI」(コッティ)です。コッティIは、瑞幸珈琲(Luckin Coffee)の創業者であった陸正耀(ルー・ジャンヤオ)と銭治亜(チエン・ジーヤー)の二人が、不正会計問題でラッキンを離れた後、創業チームを再結集して立ち上げたカフェチェーンです。コッティとラッキンの値引き競争が中国では話題になり続け、その話題でコッティは知名度を高めていきました。この創業チームは、マーケティングとテクノロジーを駆使して非常に素晴らしい店舗拡大をしています。その詳細は、「vol.201:トラフィックプールとは何か。ラッキンコーヒーのマーケティングの核心的な考え方」でご紹介しました。

コッティは日本へはガチ中華のフォーマットを使って出店しています。つまり、中国人のいる場所に出店するというやり方です。現在、コッティは東京7店舗、大阪1店舗を出店しています。

大久保、西池袋、高田馬場:中国人コミュニティのある場所

早稲田戸山、府中、神保町:中国人留学生がいる学生街

渋谷:中国人が勤務するテック系企業が多い街

と、見事に中国人のいるところをねらっています。

コッティに限らず、中国チェーンの多くは華僑または華裔によって経営されています。華僑は日本に在留はしても中国籍のままの人のことで、華裔は中国生まれもしくは中国出身の親を持ちながら、日本の国籍を取得した人のことです。都知事選で話題になった蓮舫さんは、台湾籍を持ちながら日本国籍を取得しているので華裔にあたります。

このような華僑、華裔は総称して最近では華人と呼ばれることが多くなりましたが、その多くが中国語を話し、中国人との親戚付き合いをし、WeChatでつながっています。そのため、中国の状況もよく知っていて、中国で生まれたビジネスを海外で展開したり、逆に海外の面白いビジネスを中国で展開したりと、ビジネスの架け橋にもなっています。日本だけでなく、東南アジアにも華人は多く、中国系ビジネスが浸透していく陰には、このような華人たちの活躍があります。

従業員も在留の中国人を雇用していることが多いようです。おそらく留学生ではないかと思います。日本語も流暢で、日本語、中国語、英語の注文に対応できています。見ている限りはほぼ半数ぐらいの客が中国語で注文をしているようです。

コッティは、このようにガチ中華と同じ、在留中国人をターゲットにして、次第に日本人にも使ってもらいながら市場を拡大していくという戦略のようです。しかし、なかなか厳しい面はあるかと思います。多くの日本人が「日本にはたくさんの中国人がいる」という印象を持っていますが、出入国管理庁の統計によると、2023年末で在留中国人の数は82.2万人にしかすぎません。しかも、日本中に分散をしているため、在留中国人だけをターゲットにするとあまり大きな市場だとは言えません。コッティは日本人客にどれだけ広がることができるかが今後の鍵になりそうです。

Next: 完全に日本人がターゲット。ファストファッション「SHEIN」の事例

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