複数の狙撃手がいたことを示す証拠
しかし、こうした状況証拠の中でも、この暗殺には複数の狙撃犯がかかわっていることを示す情報がもっとも重要だ。これは当時の銃声を分析した音声鑑定の専門家によっても確認された。
暗殺未遂の現場では、9発の弾丸が発射されたことが、当日の録画された多くの動画によって確認できる。デンバーにあるコロラド大学の「国立メディア・フォレンジック・センター」のケイトリン・グリゴラス所長と同大学のコール・ホワイトコットン上級研究員が行った音声鑑定の結論によると、最初の3発は第一容疑の凶器、次の5発は第二容疑の凶器、最後の「音響パルス」は第三容疑の凶器が発したものだという。
また距離だが、「モンタナ州立大学」で音声法医学を教えているマハー博士は、CNNの取材に対し、発砲音は、超音速弾丸がマイクを通過するときに典型的な、「対応する銃口の爆風音が到達する」前の「クラック・ポップ」という連続音を例証していると語った。弾丸の平均速度は秒速800~1,000メートルだ。この2つの音を認識するまでの時間から、射手はマイクから110~120メートル離れていることになるとしている。
このような結果だった。クルックスがトランプを撃ったとされる建物は、トランプの演壇から約127メートル離れているので、音声鑑定の結果と一致している。
そして、興味深いことは、9発の銃声から3つの異なった銃が使われた可能性の指摘である。最初の3発はクルックスの銃だが、明らかにこれとは音が異なる5発の連続的な銃声は別の銃から発射されたようだ。そして、9発目の最後の銃声は、クルックスを殺害した「シークレット・サービス」か地元警察のスナイパーによるものだとされている。
いまこれは大変な話題になっており、SNSではさまざまな角度から分析が進められている。「X」に動画で投稿された3つの銃声の違いをアップした。以下から確認してほしい。明らかに音が異なっていることが分かる。クリス・マーテンソンという博士が「X」で公表した分析だ。本人の専門は金融のようだ。英語の解説が入って入るが、音の違いは分かると思う。
最初に3発の銃声が再生され、その後に5発の連続射撃音、そして最後に、クルックスを射殺したと思われる当局のスナイパーの銃声が再生される。
興味深いことに、3発の後に続く5発の銃声の間隔は平均で0.77秒だ。早打ちの世界記録保持者がAR-15ライフルを半自動で撃った記録は、0.53秒だ。0.77秒で連射できるというのは、よほど訓練されたものではないと到底撃てない連射スピードだ。クルックスが撃ったと思われる最初の3発の連射速度とは明らかに異なる。ということは、クルックスの他に、5発を連射したプロの狙撃手がいた可能性がかなり高い。
しかし、この第二の狙撃手がどこから狙撃したのかは、まだよく分からない。音声鑑定から5発が連射された距離が演台から120メートル前後離れていることから、最初の3発を撃ったクルックスとかなり近い場所にいたことは確かだ。いまのところ、クルックスのいた建物の横にある給水塔の上か、またはクルックスが屋根から狙撃した建物の中から撃った可能性が指摘されている。
いずれにせよ、こうした状況証拠を見ると、トランプの暗殺未遂がクルックスの単独犯行だったとは考えにくい。「シークレット・サービス」などの法執行機関の協力がないと実現できない狙撃なので、バイデン政権が背後から仕掛けた可能性は、やはり否定できないだろう。あらゆる専門家がいま分析に取り組んでいるので、確かな事実が今後ますます明らかになるはずだ。







