1970年の現象
世界恐慌、第二次大戦という混乱の25年を経て、1950年代から米国は「黄金期」を迎え、70年代にそのピークを打ちました。
71年には当時のニクソン大統領が金とドルの兌換を停止、ドルは金の裏付けを失いました。経済成長の過程で拡大する経常収支の赤字に対し、米国は1オンス35ドルの公定レートでドルと交換することができなくなりました。
さらにその後2度にわたって石油ショックが起き、世界は物価高の中で景気が悪化するスタグフレーションに陥ります。これに対して、米国と西ドイツ、日本は景気を犠牲にしてでも物価を抑えようとしました。このため、米国も日独もその後経済の悪化を余儀なくされます。
結果として米国経済はこの後下降局面が続き、米国の覇権も70年代がピークでその後米国の国力は低下して行きます。
2020年代の特色と示唆
米国は90年代以降、金融市場の規制改革を進め、その優位性を生かして経済の回復拡大を進めました。米国の企業利益全体に占める金融業の割合は、それまで20%前後でしたが、リーマン危機前には40%を超えました。リーマン危機で一旦シュリンクしましたが、それでも最近でも35%余りを占めています。
米国はこの四半世紀、金融と情報技術の優位性を生かして経済を拡大してきましたが、2020年代になって、いよいよ米国をはじめとする世界経済はピークを迎え、そのピーク期特有の混乱が生じるようになっています。
まず産業技術の面では、温暖化の高進で脱炭素が世界的な課題となり、化石燃料から再生可能エネルギーにシフトしつつありますが、まだその姿は確定できません。
その流れで自動車産業は2030年までに新車はすべてEVにするという企業が多いのですが、EV需要が期待したほど伸びず、中国車の安値攻勢もあって、市場には疑心暗鬼があり、ベンツやボルボは2030年までのEV化計画を撤回しました。
そして米国の覇権後退もあり、米国がこれまで果たしてきた世界の警察機能も弱まり、世界紛争を収められなくなりました。2022年にはロシアがウクライナに軍事侵攻しましたが、米国はNATOの一因としてウクライナに武器の供与はしても、ウクライナ戦争に直接関与したり、停戦を促したりすることができないまま、ウクライナの荒廃が進んでいます。
2024年10月にはイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃したのを機に、イスラエルはここぞとばかり、ガザを攻撃。パレスチナの地をイスラエルが支配すべく、人質奪還、ハマス撲滅を掲げ、ここまでですでに民間人を4万人も犠牲にしてガザを攻撃、世界から非難を浴びています。
これに対する米国の対応は中途半端で、イスラエルの自己防衛権は支持し、ユダヤ系への配慮をする一方、パレスチナへの非人道的な対応はよろしくないとの姿勢です。イスラエルのネタニヤフ首相は米国の支持を盾にやりたい放題です。
中東での米国の影響力低下が顕著ですが、世界における米国の地位も確実に低下、代わってロシア、中国が影響力を高め、これに「グローバル・サウス」と言われる新興国が影響力を強め、ロシア、中国を核とするBRICSの拡大勢力となっています。
これまでの「東西」の分断から、南北問題の「南」がロシア、中国に接近した分、NATOの影響力も低下、世界の分断が進んでいます。






