景気循環には約3年周期の在庫循環、10年周期のジュグラー・サイクル(設備循環)、20年周期のクズネッツ・サイクル(建設循環)、そして50年周期のコンドラチェフ・サイクルがあります。このうち、管理技術の向上から在庫循環はほとんど見られなくなりましたが、現在は50年周期のコンドラチェフ・サイクルのピーク局面にあります。この転換期に何が起きるのか、過去の事例を参考に考えてみましょう。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年8月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
いまがピーク局面「コンドラチェフ循環」とは
コンドラチェフ循環とは、1920年代にロシアの経済学者、ニコライ・コンドラチェフが提唱した50年周期の長期循環で、物価や金利、その他の経済指標を見ると、経済には約25年の上昇、その後の25年の下降とあわせて約50年周期の長期の経済循環があることを発見しました。
例えば米国では1970年代の石油ショックのあと約25年間経済の混乱期を経験し、90年代に底入れしてその後2020年代まで成長を続けました。
その前の50年についても、1920年代に経済が爛熟し、ピークをつけたあとは約25年にわたって経済の混乱、戦争へと突入、ようやく1950年代になって成長が続く黄金期を迎えます。
この長期波動を引き起こす要因としてコンドラチェフ氏は、技術革新、戦争や革命、金の生産量などを挙げています。そして50年周期が2つ重なる100年周期には「ヘゲモニー(覇権)・サイクル」もみられるとしています。
2020年代の現在は、ちょうどコンドラチェフ・サイクルのピークにあたり、多くの点で転換期にあり、ヘゲモニー・サイクルでみても1920年代から100年の転換期になります。そして経済循環的には今後25年程度は混乱を伴って景気の下降局面に入ることになります。
1920年に起きた現象
今から100年前の1920年代は経済の爛熟期にあたり、米国の株式市場はバブルの様相を呈し、日本では大正デモクラシーをおう歌していました。
その中で多くの変化もみられました。まず世界のヘゲモニーがイギリスから米国に移ろうとしていました。
技術面でもエネルギーの主役が石炭から石油にシフトした時期で、これも石炭を生産するイギリスから石油の米国へのシフトにつながります。
しかし、米国の爛熟、株式市場のバブルも1929年には暗黒の金曜日の株価大暴落を引き起こし、その後世界恐慌へと展開、経済の混乱がドイツにナチズムの台頭、ファシズム政権の誕生、第二次世界大戦へと転がり落ちます。