バフェットは近々で「金融危機」が起こる可能性を考えている
売却した銘柄は金融株に偏っていて、買った銘柄は下落に強いディフェンシブ銘柄となるとバフェットは金融危機を想定している可能性があることが考えられます。
2008年のリーマンショックでは、金融株が下落してそれにつられてS&P500も大きく下げたことから、事前にリスク回避をしているように見えるからです。
実際にバフェットはリーマンショックが起きる前の2007年に、金融株のポジションを減らしています。
また現在、3,100億ドル(過去最高)というかなりの現金を手元に置いたまま投資に回していません。
今回のバフェットの動きをみていると、金融危機を懸念してかなり慎重になっているように見えます。
S&P500は割高?
S&P500の株価の推移をみると、近年では上昇が加速しているように見えます。

S&P500 月足(SBI証券提供)
2022年にはコロナショックで大きく下落しましたが、そこから勢いよく上がって現在にいたります。
過去と比べて相対的に見てもかなり上がっていますし、直近5年で見るとプラス83%の上昇となっています。
人によっては過去より上がっているから割高だと判断する方もいますが、一般的に金融の世界ではそれだけで割高ということにはなりません。
株価の上昇には根拠があり、基本となるのが企業業績でその中でも特に重要となるのが、EPS(一株当たり純利益)です。
投資家にとって実質価値となるEPSが上がってくると、自ずと株価は上昇します。
そのため、EPSの上昇に伴って株価が上昇しているのかを観察する必要があります。
他にも、PERやPBRの観点からS&P500が割高なのかみていきましょう。
<S&P500のEPS(一株当たり純利益)>
S&P500とEPSの推移を見てみます。

青が株価で、オレンジがEPSです。
S&P500は、基本的に株価とEPSは一緒に上がっていることがわかります。
EPSの上昇に伴って株価が上がってきていることからも、特に異常はありません。
仮にEPSが全く増えていないにもかかわらず、株価だけ上がっているならバブルだといえます。
ですが、EPSの方も着実に進捗していて特に問題はないといえます。
<S&P500のPER>
ただEPSと株価をグラフでみるにしても、どの程度株価とEPSが乖離すると異常なのかが明確ではないので別の角度からみていきましょう。
ここでは、PERを使って確認していきます。
PERとは、EPSに対して株価が割高なのか割安なのかを確認できる株価指標です。
PERが高いほど、EPSに対して株価が割高であるとわかります。
直近の、S&P500のPERを見てみましょう。

直近では、30.63倍となっていて過去の水準(過去平均16〜18倍)からすると高いです。
ただ最近は、米国の金利水準が下がってきています。
少し難しい話ですが、金利水準が下がると割引率が下がるのでPERの基準値が上がります。
なので、過去と比べて近年のPERの平均水準が上がっているのは必ずしも異常ではありません。
それを踏まえて見ると、現在のPERは少し高いけれど許容範囲にあると見て取れます。
ですが、足元ではたまたま市場の調子がよくて利益が高い傾向にあることから、現在のPERは問題ないように見える可能性があります。
そこで、シラーPERを見てみましょう。
シラーPERとは、インフレ調整済みの過去10年のEPSの平均値と比べて現在の株価の割安度合いを確認するものです。
そのため、シラーPERでは一時的な利益の増減や景気循環による影響を除いているので実質的な割安度が測れます。

S&P500のシラーPERを見てみると38.54倍です。
このことから、現在のS&P500は過去の水準と比べると割高であることがわかります。
<S&P500のPBR>
PBRでも、割安度合いをみてみましょう。

PBRとは、会社の純資産に対して現在の株価の割安度合いを確認できる株価指標です。
PBRは2009年から継続的に上がってきていて、直近では5.26倍となっています。
水準だけを見ると、2000年のITバブルと同じレベルまで上がってきていることからも割高だといえそうです。
ITバブルというと、いままさにAIバブルとも言えるような雰囲気もありますし今後S&P500を注意深く見守る方がいいかもしれません。