米国経済がトリプル安(株安・債券安・ドル安)という危機的な状況に陥っています。この異常事態は、トランプ大統領の関税政策がもたらしたものであり、市場は彼の政策が米国経済を「地獄」のような状況に導くと懸念しているようです。このままいくと、その懸念が現実のものとなる可能性も否定できません。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
なぜ米国はトリプル安に? トランプ大統領の関税政策と市場の懸念
トリプル安の直接的な原因として挙げられるのが、トランプ大統領による相互関税政策です。2024年4月には、トランプ氏が相互関税をかけると発言したことで、ダウ平均株価が大幅に暴落しました。

NYダウ 日足(SBI証券提供)
一時的に市場は落ち着きを取り戻したものの、4月21日にはトランプ氏がFRBのパウエル議長を解任するのではないかという憶測が流れ、実際にX(旧Twitter)でパウエル議長を強く批判したことで、再び株価は大きく下落しました。
しかし、影響は株式市場だけに留まりません。長期金利が急騰していて、これは債券価格の下落を意味します。債券価格と金利は逆方向に動くため、金利の上昇は債券が売られているということになります。同時に、ドルも下落傾向にあり、ドル安が進行しています。
市場は、トランプ大統領の政策が米国経済にとって非常にネガティブな影響をもたらすと考えているようです。株安、債券安、ドル安というトリプル安は、投資家の信頼を失い、さらなる経済の悪化を招きかねません。
米国、中国よりも大きなダメージ? 相互関税がもたらすGDPへの影響
アジア経済研究所(ジェトロの一組織)のレポートによると、トランプ政権の相互関税政策は、関税をかけられた国だけでなく、米国自身に大きなダメージを与える可能性が指摘されています。2027年のGDP変化の予測では、米国は-5.2%と大幅なマイナス成長が想定されているのに対し、関税の主なターゲットである中国のマイナス成長は-1.9%に留まっています。
関税政策が米国経済にとって自殺行為になりかねないことです。