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脱・家電で変貌「日立製作所」は買いか?M&Aと収益改革で時価総額16兆円、“令和の日立”の実態に迫る=元村浩之

最近株価が大きく上昇している日立製作所<6501>について深掘りしていきたいと思います。この株価上昇は一時的なものではなく、事業がかなり強くなっていることが背景にあると感じています。パッと見ただけではその強みが分かりにくい企業でもあるため、この記事を通じて皆さんの投資の参考になれば幸いです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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かつての「家電の日立」からの変貌

私たちは日立製作所と聞くと、かつては家電製品を作っていた会社というイメージを持っているかもしれません。

しかし、現在は家電事業からはほぼ撤退しています。リーマンショック後に業績が大きく落ち込んだ際、不採算事業から次々と撤退・売却を進めました。

白物家電などは他社への事業売却などが行われました。掃除機などは、グループ会社の一部が手がけているとしても、全体への貢献度はかなり低くなっていると考えられます。

中国や韓国メーカーの台頭により日本の家電メーカーが苦境に立たされた中で、日立は改革を断行してきたイメージがあります。

<2010年代の事業整理と2020年代以降の「攻め」の戦略>

リーマンショック後の2009年3月期に大赤字を計上しましたが、その後2010年代は目立った成長というよりは、事業の整理・再編を進めてきた期間だったと言えます。

白物家電の売却や再編に加え、ハードディスク事業や日立工機といった非中核事業の売却、日立建機の持ち分売却などが進められました。この時期は売上規模は横ばいか、むしろ減少している印象です。まさに成長に向けた準備期間だったと言えるでしょう。

潮目が変わったのは2020年代に入ってからです。この頃から、日立は大型M&Aを進め、「攻め」の姿勢に転じました。

  • スイスのABB社のパワグリッド(電力インフラ)事業
  • 2021年の米国のグローバルロジック(システムデザイン・UI/UX)
  • 2024年のフランスのタレス(鉄道信号事業)

これらのM&Aを通じて、交通インフラや電力インフラといった分野に注力する流れが強くなってきました。

日立の最大の強みは「すり合わせる力」

では、日立の強みは何でしょうか?私が注目しているのは、「すり合わせる力」です。

日立には約800社ものグループ会社があり、IT・制御技術・プロダクトと非常に幅広い技術や事業を持っています。これらの多様な要素を組み合わせて、複雑な社会インフラを構築する力が非常に強いのです。

インフラ構築にはITや制御技術、プロダクトなどをつなぎ合わせる必要があるため、この「すり合わせる力」が世界各国から高く評価され、需要が高まっていると考えられます。

なぜM&Aが必要だったのか?という疑問も湧きますが、おそらくそれは、作ることはできても、それを分かりやすい形で社会インフラに実装させたり、使い勝手の良い形で提供する能力が不足していたためでしょう。UI/UXのような部分が弱かったのかもしれません。

そこでグローバルロジックを買収することで、システムのデザインや設計思考を補いました。これにより、日立の持つ技術やソリューションを組み合わせて、顧客にゼロベースから構築したシステムとして提案できるようになったと考えられます。

Next: 事業領域は多岐にわたる。長期投資家が注目すべきは…?

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