「ドイツ銀行は最大の懸念」IMFも報告
さらにドイツ銀行の話を続けます。IMFの分析報告書によると、ドイツ銀行が一番危ないとの評価結果(PDF)となっています。
偶然にも、米連銀のストレステスト結果が公開された2016年6月29日に、今度はIMFの報告書(全118頁)が発行されたのです。タイトルは「ドイツ金融業界の評価報告」です。副題は「金融システムの安定性評価」となっています。
その結論は、ドイツ銀行がメルトダウンすれば、現在の金融体制で最大規模の汚染流出源になって、最悪の事態になるというものです。
IMFによる分析報告書のポイント
<30頁 C章>
第24項
システム・リスクと汚染流出(ドミノ倒し) ドイツ国内で最大規模の銀行(複数)と保険会社(複数)が密接な影響関係を持っている。Allianz、Munich Re、Hannover Re、Deutsche Bank(ドイツ銀行)、Aareal銀行の影響関係がリスクとなる。特にAllianzが最大の懸念である。ドイツ銀行とCommerzbankが外部の銀行、保険会社への汚染流出の源泉となるだろう。銀行と生命保険会社の監視が重要である。
第25項
全体的には、国境を越えるリスクは高くなくても、銀行セクターが外部汚染流出の源泉になる。金融機関相互のネットワークを分析すると、外部からのドイツ銀行セクターへの汚染流入よりもドイツ銀行セクターから外部への汚染流出の方が深刻な問題となるだろう。自己資本の毀損比率を考えると、特にドイツ、フランス、英国、米国の銀行セクターへの影響度は大きい。外部からの汚染流入があっても、打撃としてはまだ許容できるだろう。
第26項
国際金融体制にとって重要な金融機関(G-SIBs)の中でも、ドイツ銀行はシステムリスクの観点から見て最重要な銀行であり、第2位はHSBC、第3位はCredit Suisseである。
Commerzbankはドイツ国内では重要な金融機関だが、国際的なシステムリスクという観点からすると重要ではない。同行は汚染流入により打撃を受ける側ではあるが、汚染流出源とはなりえないだろう。むしろドイツ銀行のリスク管理が重要であることを強調したい。ドイツ銀行の外国金融商品への投資がどのようになるのか緊密に監視が必要であり、また、これまでの戦略を捨てて、急速に巻き戻しをしようとしているが、それも監視が必要である。
<43頁>
第59項
銀行解体計画の中の銀行業務再開および資本注入を確実にするのが急務である。金融当局は、不良資産の評価および移転を迅速にしなければならない。場合によっては、数日で解体作業を終え、窓口閉鎖をし、その後業務再開をさせなければならない。また救済資金も確保せねばならない。この救済資金はプライベートからの資金注入が望ましい。それが不可能な場合は公的な資金注入となろう。
(※筆者注:これまでのようなBail-Outではなく、Bail-In方式の採用を言っているのだろう)
<結論>
IMFによると、ドイツ銀行が最大の心配の種である。理由は、もしドイツ銀行が倒れると外部への汚染流出が最大規模となるからである。銀行解体の場合に備えて、準備が必要である。
以下画像を参照下さい。
(ア) 銀行の相互関係図、中央にあるのがドイツ銀行です。ドイツ銀行が倒れると、どこの銀行に大きな影響が起きるかを示しています。
(イ) 国際金融体制にとって重要な金融機関(G-SIBs)の中で、どこが一番重要なのかを示しています。このグラフでは、ドイツ銀行が全世界の金融システムにとって一番重要な銀行であり、第2位はHSBC、第3位はCredit Suisseと記載されています。
※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2016年7月2日,3日号の一部抜粋です。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。月初の購読は特にお得です!
※太字はMONEY VOICE編集部による