Jカーブ効果:目先の利益操作を見抜く
現在のROIC(利益)を無理に高く見せようとする操作は、将来の成長の種を摘み、将来のROICを下げる原因となります。
<目先の利益を上げる操作の例>
1.分子(NOPAT)の操作:
- 研究開発費(R&D)の削減:目先は利益が上がるが、将来の商売の種がなくなる。
- ブランドや人材育成費の削減。
2.分母(投下資本)の操作:設備投資の先送り:将来的な競争優位性を失う。
再建途中の企業(例:日産)などは、苦境から脱するためにコスト削減や投資見送りをせざるを得ない場合がありますが、これは中長期的な成長を犠牲にしている可能性があります。
<Jカーブ効果に見る最高の買い時>
将来のために設備投資や人材投資を行う企業は、一時的に利益が減少し、株価が下がる(Jカーブの谷)ことがあります。
しかし、投資家がその投資が将来的に高いROICを生むと確信できれば、その株価が下がったタイミングは最高の買い時となり得ます。なぜなら、その投資は競争優位性を確保し、将来の成長分が乗っかることで、長期的に高いリターンが得られるからです。
長期投資においては、ROICが高いリターンを生む事業に投資を続ける企業こそが最も強い企業だと言えます。
まとめ:概念を捉え、企業の方向性を見極める
ROICを分析する上で、数字を厳密にチェックすることよりも、将来どのような方向性(ベクトル)に向かうのかという概念を捉えることが非常に重要です。
利益率と回転率の分解を通じて企業の強みや弱みを理解し、さらにその企業が未来の増分ROICを高めるような戦略的投資を続けているかを見極めることが、長期的な企業価値を見抜く鍵となります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年11月29日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。