<中国経済を崩壊に導く「4つのD」とは?>
4つのDとは、次のものです。
- Deflation:デフレ、消費需要の低迷
- Debt:債務、特に地方政府の債務
- Demographics:人口動態。人口ボーナスの終了
- Decoupling:デカップリング。米国主導のサプライチェーンからの切り離し
今回は、この論文に基づいて、4つのDの通説と真相について見ていきます。
中国経済崩壊の要因その1:Deflation(デフレ、消費需要の低迷)
(1)のデフレの通説は、不動産バブルの崩壊により、多くの人が将来不安に陥り、消費を抑制している。少し余裕が生まれてもその多くを貯蓄に回してしまう。そもそも個人消費がGDPに占める割合が、中国は極端に低く、もともと消費する力が弱いところに節約ムードが高まり、個人消費は底なしに減っていくというものです。
不動産バブルに関しては確かにそのとおりです。これまで手広くマンションを購入した人はみな頭を抱えています。お金があるから不動産投資をするのではなく、銀行でローンを組んで投資用不動産を買っていました。それが不動産価格が下がり始めたため、不動産を売却してローンの残債を整理しても、まだローンが残ってしまう状況になっています。マンションは負の財産にすらなっているのです。そのため、多くの人が消費を節約し、貯蓄に回し、個人消費が伸び悩んでいます。実際、2020年1月から2024年11月の間に家計貯蓄は8.9兆ドル(約1,400兆円)増加しています。これだけのお金が個人消費から消えたことになります。
そもそも中国のGDPに占める個人消費の割合が低いことは、各国から「国は豊かになったかもしれないが、市民は貧しい」と言われるようになっています。しかし、中国に行ったことがある人は、「市民は貧しい」という印象は持っていないのではないでしょうか。豊かかどうかはともかく、消費生活を満喫している印象のほうがはるかに強いのではないかと思います。
これには、統計上の勘違いがあります。
まず、家計最終支出のGDPに対する比率を世界銀行のデータから整理してします。日本はGDPの55%が個人消費、米国は68%が個人消費であるのに対し、中国では40%しかありません。
ところが、消費ではなく、家計所得で見ると、OECDの推定ではGPDの60%程度となり、これは日本やドイツ、カナダと同水準で、韓国よりも上回っています。所得は先進国並み、消費は非常に弱いというのはどういうことでしょうか。
これは、GDPの算出方法に原因があります。GDPの計算方法は、国連、国際通貨基金(IMF)、世界銀行などが共同で策定した基準「SNA」(System of National Account)で定められています。しかし、各国にはそれぞれ歴史的な算出方法があるため、いくつかバリエーションが用意されています。多くの西側諸国では、最終支出からGDPを計算する方法を使っていますが、計画経済だった中国は伝統的に生産側からGDPを計算する方法を使ってきたため、今でもこのやり方を踏襲しています。もちろん、SNAに定められた算出方法のひとつです。
しかし、最終支出法、生産法で、大きな違いがあります。それは、現物社会移転(STIK=Social Transfers in Kind)の扱いです。これは政府が提供する医療、教育、公共サービスなどを政府支出に含めるか、家計所得/消費に含めるかの問題です。私たち日本などの最終支出から見る算出方法では、「誰がその消費を行ったか」を重視するため個人消費に含まれますが、中国のような生産側からの算出方法では、「誰がお金を支払ったか」が重視されるため、政府支出に含まれてしまうのです。
GDPの総量は変わりません。STIKをどちらの内訳に入れるかだけの違いです。しかし、中国内でも、国際的に多くの国で採用されている最終支出法の方が、個人消費の割合が増え、国際比較をしやすくなることから、算出方法を改めた方がいいのではないかという議論が起きています。しかし、国家統計局では、過去からの連続性を重視するため、変える必要はないと断言しています。
このSTIKの割合はGDPの6%以上にもなります。さらにその他にも違いがあり、OECDの家計所得は、中国の算出方法ではなく、OECDの国際統一算出方法で行っていますので、家計所得が先進国並みになるのです。
つまり、中国はもはや先進国並みの消費力を持った国となっているため、適切な対策を打つことで消費は刺激できるはずなのです。政府は消費クーポン、減税、さらにはEVと家電製品の買い替え補助金などの消費促進策を矢継ぎ早に行っています。もちろん、効果があがっているのかどうかは時間が経たないとわかりません。
中国経済崩壊の要因その2:Debt(債務)
2つ目のDであるDebt(債務)は、地方政府の負債の問題です。国全体の総負債はGDPの286%にもなり、危険水域を超えているということになっています。しかも、隠れ負債があるのだという話になっています。
もちろん、この負債は大きく、対処に時間がかかる問題ですが、中国だけが危険水域にあるというわけではありません。IMFのデータによると、債務超過国は1位が圧倒手に中国ですが、2位は内戦中のスーダン、3位は日本となっています。