fbpx

なぜ中国経済は50年も崩壊し続けているのに破綻しないのか?習近平を苦しめる「4つのD」の通説と真実=牧野武文

日本の債務の多くは国債などの自国通貨であり、中には「円をたくさん刷れば債務は解消できる。政府の債務は国民の資産なのだから、いくら債務があっても平気」などという人までいます。そんなことをすれば、あっという間に日本円の価値が下がって、輸入インフレに苦しめられることになります。というより、すでにそれは始まっています。

しかし、一面の真実であることは確かで、中国も債務は人民元建の債務ですから、ある程度膨張しても、時間をかけて処理をすることができます。少なくとも、必要な支払いができなくなるデフォルトにはなりようがありません。

さらに、日本では「地方政府には隠れ負債があって、これがいくらになるか見当がつかない。底なしだ」という人までいますが、これは、いろいろなことがごちゃ混ぜになった議論です。

まず、地方政府が地下鉄や道路整備、再開発などをする時は、地方債を発行して資金を調達するのが基本ですが、中央政府により、地方債の発行残高は地方GDPの1/3までと定められていました。そこで地方政府は、融資プラットフォーム(LGFV=Local Government Financing Vehicles)を設立しました。銀行や金融機関が出資をして、地方政府がお金を借りられるプラットフォームです。これは地方債ではないので、3分の1の制限を超えて資金を調達することができます。これにより、地方政府はインフラ整備を行っていきました。

このLGFVの債務は、地方政府の収支報告書とは別紙での報告となるため、俗に「隠れ債務」と呼ばれますが、隠しているわけではなく、債務額は明らかになっています。闇金融から借りたわけではありません。IMFのデータ=GDPの286%には、もちろんこのLGFVの債務も含まれています。

問題は、利子が地方債に比べてはるかに高額であることです。これを放置しておくと、地方は利払いで財政が悪化をし続けることになります。そこで、中央政府は2024年11月に、今後3年で6兆元の枠組みを設定して、中央政府が保証する形で地方債の追加発行を承認しました。つまり、LGFVの高利の債務を返済して、地方債に借り換えるというものです。これにより、利子が地方債基準になるため、利払いによる財政悪化を避けることができます。さらに、今後5年で4兆元の特別債の発行も承認されました。これも借り換えをして、利払いの影響を軽減するためです。

ただし、このLGFVの債務残高は60兆元もあります。60兆元のうちの10兆元を借り換えるわけですから、まだまだ足りません。しかも、借り換えたからといって、債務がなくなるわけではありません。地方政府は今後数十年にわたって、この債務を処理していかなければなりません。すぐにデフォルトして地方政府が破綻するという性質のものではありませんが、地方財政に重くのしかかる債務であることは間違いありません。地方は、有力企業を誘致する、新しい産業を起こすということを真剣に実行しなければならなくなっています。

また、このような地方政府の投資を「無駄遣いの典型。中国には誰もすまないマンションが山のようにある」などという人もいますが、中国の政府投資は非常にうまくいっています。

政府(Public Sector)、貿易(External Sector)、民間(Private Sector)それぞれの収支バランスを見ると、見事なまでの鏡写しになっていることがわかります。特に90年以降は、政府の赤字と貿易の赤字は、ほぼそのまま民間の黒字になっています。つまり、政府投資がきちんと民間企業の利益になっているということです。

このような効果のある投資であれば、政府の債務残高は自国通貨建てなのですから、時間をかけて処理をすることが可能になります。

しかも、中国は人民元を厳しく管理しているため、人民元安も急速には起こりません。

Next: 人口ボーナスの消失にどう対処?日本が参考にすべき中国の政策

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー