<26年3月期BPS3,062円でPBR1倍ラインは3,063円に切り上がり>
26年3月期決算で1株当たり親会社所有者帰属持分(BPS)は3,062.82円となり、前期の2,753.09円から+11.3%増加しました。これは利益の積み上げと自社株買いによる効果で、PBR1倍ラインの株価が3,063円水準まで切り上がりました。
当社の過去分析記事(2026年2月)時点ではPBR1倍ラインは2,742円でしたが、数カ月で321円も上方修正された格好です。6月16日時点の株価2,855円前後で計算すると、PBRは約0.93倍となり、PBR1倍をやや下回る水準で取引されています。
6月11日に付けた年初来安値2,718.5円でもPBRは約0.89倍にとどまり、株価の絶対水準ではなくBPS基準でみれば、現在の株価は過去の極端な割安水準にはあたりません。BPSが切り上がっている事実は、株価下落の重みを和らげる重要な変化点です。
<PBR0.85倍2,603円は過去のコロナ・半導体不足時にも下げ止まった節目>
トヨタの株価は過去30年にわたり、PBR0.85倍を割り込んだ場面で買いが入りやすい傾向が続いてきました。2020年のコロナショックで株価が急落した際も、近年の半導体不足の時期にも、PBRはおおよそ0.85倍水準まで低下した後に下げ止まり反発に転じています。
当社の過去分析記事で示した通り、2010年から現在までの約30%の期間でPBR1倍を割り込んでいた一方、0.85倍を持続的に下回る期間は限定的でした。これを最新BPS3,062円に当てはめると、PBR0.85倍ラインの株価は2,603円と算出されます。
実際、6月11日に付けた年初来安値2,718.5円でもこの2,603円は割っておらず、過去の節目が今回も意識された形です。6月16日時点の株価2,855円からの下落余地は約△8.8%で、長期投資家にとって2,603円は機械的な押し目買いの目安として意識される水準でしょう。
<1倍が0.85倍まで低下するには約6兆円の純資産減少が必要|現実性は低い>
26年3月期末の親会社所有者帰属持分は39兆9,189億円と過去最大規模に達しています。仮にPBR1倍水準が現在のPBR0.85倍水準まで低下するためには、理論上は約6兆円の純資産減少が必要となります。
トヨタはコロナ禍においても2兆円以上の営業利益を確保してきた実績があり、関税逆風下の27年3月期も営業利益3兆円・純利益3兆円のガイダンスを示しているところです。
会計上の損失計上で純資産が短期間に6兆円も減少する事態は、現状の収益力からみて起こりにくいと考えられます。営業活動によるキャッシュフローも26年3月期は5兆4,729億円と大幅に増加しており、財務基盤はむしろ強固な状態です。この純資産規模と収益力が、PBR0.85倍水準を下回る状況が長期化しない論理的な根拠になります。
<配当利回り3.46%・27年3月期100円増配計画も下値を支える要因>
トヨタは26年3月期の年間配当を95円(前期比+5円増配)とし、27年3月期は100円(同+5円増配)を計画しています。6月16日時点の株価2,855円ベースの配当利回りは約3.5%で、東証プライム市場の平均利回り2%台前半を大きく上回ります。配当総額は1兆2,382億円、配当性向は32.1%まで上昇しました。
減益が続いても増配を維持する方針は、トヨタの株主還元への強い姿勢を示しています。長期保有を志向する配当重視の投資家にとっては、下値で買い向かう動機になります。
PER約12倍・PBR約0.93倍という割安なバリュエーションと合わせて、配当利回り3.5%前後は株価が一定水準を下回ると買い需要が湧きやすい土壌をつくります。これらバリュエーション面と株主還元面の指標が、PBR0.85倍2,603円という長期下値目処を補強する材料です。