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株価急騰「デクセリアルズ」なぜ長期投資家から熱視線?AI時代の主役に躍り出る理由と投資リスクを解説=栫井駿介

2022年「京都セミコンダクター」買収に見る先見の明

デクセリアルズの素晴らしさは、技術力だけでなく経営の「先手」を打つ巧みさにもあります。
同社が光半導体の技術を手に入れたのは、2022年に「京都セミコンダクター」という会社を買収したことがきっかけでした。

2022年といえば、チャットGPTが公開されて生成AIブームが起きるよりも前の時期です。
まだAIデータセンターの拡大がこれほど確実視されていなかったタイミングで、将来性を見抜いて買収を実行した経営陣の先見の明は、投資家として高く評価すべきポイントです。

このように、市場が注目するずっと前から布石を打っておく姿勢が、現在の利益成長に繋がっているのです。

<ソニーDNAの継承>

デクセリアルズの経営の質の高さは、その出自にも関係があるかもしれません。
同社はもともと「ソニーケミカル」というソニーグループの会社でした。
ソニーが経営改革の中で事業を切り離したタイミングで独立しましたが、その根底にはソニーの創業理念である「自由活達にして愉快なる理想工場」という精神が流れています。

特に注目すべきは「人材の質」です。
1990年代後半から2000年代前半、ソニーが就職人気ランキングで絶頂期にあった時期に入社した優秀な人材たちが、現在50歳前後の重要なポジションを占めています。
知名度の低い会社が優秀な人材を確保するのは困難ですが、デクセリアルズは「もともとソニーだった」という背景により、極めて高い知的能力と熱量を持った人材層を内部に抱えているのです。
この人材アセットこそが、ニッチな分野で世界一を維持し続ける力の源泉と言えるでしょう。

「惜しいポイント」とリスク

もちろん、投資である以上はリスクにも目を向けなければなりません。
デクセリアルズの戦略である「小さな池の大きな魚」でいることは、収益性を高める一方で、その「池(市場)」自体が小さすぎると、業績を爆発的に伸ばすことが難しくなるという側面も持っています。

実際に、同社が強みを持つタブレットやノートPC、スマートフォンの市場は現在、全体として下落傾向にあり、この市場の縮小に抗うことは容易ではありません。
また、かつて期待されていた電気自動車(EV)市場も足元で失速しており、自動車向け部材の伸びも当初の予想ほどではないという現状があります。
成長を続けるためには、今回の光半導体のように、常に新しい「池」を探し続け、先手を打ち続ける必要があるのです。

PER24倍とROE30%から読み解く勝算

最後に株価の水準について考察します。

直近の急騰により「バブルではないか」という声もありますが、現在のPER(株価収益率)は約24倍程度です。
他のハイテク銘柄が50倍や100倍といった期待値で買われている状況に比べれば、まだ極端な割高感はありません。

ROEが25%〜30%という極めて高い水準にあることを考えれば、現在の株価は将来の成長期待をある程度妥当に反映しているとも捉えられます。
足元では今期の営業利益成長が1.1%増という控えめな予想にとどまっており、短期的には高値掴みのリスクもありますが、長期的な視点では、データセンター需要と光半導体の進化という逃れられない潮流のど真ん中にいる企業です。

デクセリアルズは、地味ながらも強固な「経済の堀」を持ち、先手先手の経営で未来を切り拓く素晴らしい企業です。
この「超地味・高収益」な未来モンスター企業が、光電融合という大きな湖で大輪の花を咲かせる日が来るのか。
長期投資家として、その推移をじっくりと見守る価値は十分にあると言えるでしょう。

デクセリアルズ<4980> 日足(SBI証券提供)

デクセリアルズ<4980> 日足(SBI証券提供)

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【関連】なぜバフェットは「守り」に入る?現在の株価は高すぎ?長期投資家が注視すべき市場のシグナル=栫井駿介

image by: Piotr Swat / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年6月20日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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