fbpx

経済対策「20兆円」の実証的根拠~「負債」こそが成長の源泉である=藤井聡

そもそも、このネットの資金需要というものは、「ゼロ」ではじめて、経済の縮小が止まり、「マイナス」になってはじめて、経済が成長していく……という尺度です。

おおよそ資本主義におけるマクロ経済というものは、その内部の経済主体が「負債」をすることで拡大するものです。誰も負債を持たなければ、経済は全く変化しなくなります。

例えば、私が「今期儲けた100万円だけを使う」なら、GDPは100万円しか増えません。しかしその100万円に加えて、銀行から30万円を借りてそれを使えば、GDPは「130万円」も増えることになります。

この時、経済は、私が支出した「負債額30万円」の分だけ、成長することになります。

つまり、「負債は成長の源泉」、なのです。

(※なお、より詳しく言うなら、その成長は「名目成長」であって、これは、「実質成長」と「物価上昇」の和、でもあります。そう考えますと、実質成長と物価上昇の源泉こそが、「負債」だということができます。)

一方で、私がその100万円の儲けを全て使わず、30万円貯金し、70万円しか使わなければ、GDPは70万円しか増えません。逆にいうなら、30万円の貯蓄分だけ、経済は縮小してしまいます。

つまり、「貯蓄は経済縮小の源泉」、なのです。

だからこそ、貯蓄・負債を把握することで、経済成長や経済縮小をより正確に把握することが可能となるわけです。

さて、以上の前提に基づいてこのグラフを解釈すると、いくつかのとても興味深い「7つの傾向」を読み取ることができます。

(以下、下記グラフを別ウィンド等でじっくりとご覧頂きながら、お読み頂ければ幸いです。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=825161460918132&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3&theater

第一に、日本企業全体の資金需要(茶色線の企業貯蓄率)は、1998年の日本のデフレ下以降、一貫して「プラス」となっています。これは、企業が貯蓄を繰り返していることを意味しています。これは、それ以前は基本的に「マイナス」であったことと対象的です。

この「企業の貯蓄傾向」こそが、「デフレの正体」であり、「経済縮退のデフレ・エンジン」です。

第二に、90年代後半以降の企業の貯蓄率の増進とは正反対の推移を示しているのが、「一般政府収支」(青色線)です。これは、一般政府(つまり、中央政府と地方政府すべてを合わせた政府)の「貯蓄率」を意味します。この線からわかるのが、企業が貯蓄を増やし始めた90年代後半以降、政府はそれとは逆に「貯蓄を減らす=負債を増やす」という推移を辿っている、という点です。

これはデフレ化した90年代後半以降、民間が「成長の源泉たる負債」を縮小させ、経済を縮小させる圧力を発し続けている中、政府が民間の肩代わりをして「成長の源泉たる負債」をしてやり、日本経済を支えている――という構図にあることを示しています。

第三に、それらの結果として、この茶色線と青色線の合計値である「ネットの資金需要」(灰色グラフ)は、98年以降の「民間の貯蓄率の増加=資金需要不足」を大きく埋め合わせ、「ゼロ近辺」で増減を繰り返す格好となっています。

つまり98年以降、政府の財政のおかげで、「未曽有の大規模景気縮退」が抑えられた、という次第です。

第四に、そうであるにも関わらず、2000年代は、ネットの資金需要(灰色グラフ)は「プラス」で推移していることがわかります。これはまさに、日本経済でデフレスパイラルが回り、経済が縮小し続けていたことを意味しています。

第五に、そんな中、2010年以降、ようやく、ネットの資金需要(灰色グラフ)は「マイナス化」します。これはつまり、官民合わせた「負債」が拡大し、これを通して経済が「拡大」していったことを示しています。

これは、2010年から2014年の間、政府負債が高い水準(GDP比でマイナス10%程度)で推移していたことが原因です。

いわば政府支出を拡大したアベノミクスが、その政府支出の拡大=政府負債の拡大によって経済成長が果たされていたことを意味します。

そして、第六に、そうした「政府負債の拡大=経済成長エンジンの駆動」につられるようにして、2010年以降、企業は貯蓄率(茶色線)を縮小させていった事が見て取れます。

これこそ、「アベノミクスの好循環」と呼ばれるものであり、それが、政府支出の拡大=政府負債の拡大によって駆動されていったわけです。

しかし第七に、日本政府は、消費増税を行った2014年以降、急速に負債額を縮小させていきます(政府の青線が上昇していきます)。これは日本政府が、2014年以降、激しい「緊縮路線」に入ったことを意味しています。

そして、その帰結として2015年から、ついにネットの資金需要が「プラス」となったのです。

これこそが、昨今の大幅な景気後退の原因です。

そして、対GDP比で3%=15兆円程度の資金需要不足が生じている――というのが、今日の状況なのです。

Next: 経済成長には20兆円以上の「負債拡大」=「資金需要拡大」が不可欠

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー