貧しい3人の若者が時価総額5兆円の起業家に
少し前の話です。サンフランシスコで3人の若者が同居していました。みな貧しく、部屋のレンタル料を払うお金もない。そこで3人は、自分たちの狭いアパートを貸すことを思いつきます。
サンフランシスコでは国際会議が多く開かれるので、会議があるときに部屋を貸し、それで得たお金を家賃の支払いに充てようと考えたのです。ベッドがないのでエアマットレスを持ち込み、社名をエアーベッド・アンド・ブレックファーストの略で「Airbnb(エアビーアンドビー)」と名付けました。これが、Airbnbという、時価総額5兆円のベンチャー企業の誕生の経緯です。
初日に3人のお客さんを迎えてスタートして、あっという間にニューヨーク、次はハンブルグです。スマホさえあれば、借りたい人と貸したい人をマッチングでき、拠点などどこでもいい。宿泊施設が不足している観光地や宿泊費が非常に高い大都市において、一般の人が部屋を提供します(民泊)。
創業から5年で、世界500都市においてサービスを展開しています。中国の民泊仲介サイト「自在客」もAirbnbに負けないぐらいの数の顧客を抱えており、全世界に同じようなシステムが瞬間的にできあがりました。
あまりにシンプルで、あまりに速く、国が妨害しようにもしようがないのです。日本は旅館業法によってスプリンクラーの取り付けや、受付の設置など、さまざまな規制をしてますが、個人ベースで「友達だから泊めた」というのを防ぐ方法はありません。
そのようにしてあっという間にこのような会社が成長していきます。
テクノロジーを受け入れた人しかメリットを享受できない
私はゴールドコーストにあるボンド大学で教鞭をとっていますが、毎年、卒業式の前日にバーベキューパーティーがあります。
学生はタクシーで来てホテルに宿泊しますが、最近はUberを使い、Airbnbで宿泊先を探すようになりました。200ドル程度かかっていた宿泊費が、今では平均50ドル程度と、かなり安くなっています。
昔とは違う行動を取れる人、すなわちこのデジタルコンチネントに足を踏み入れて、コンフォタブル(気持ちよく過ごせる)な人と、手を挙げて「ヘイ、タクシー」と自分でつかまえた車でないと乗れない人や、名だたるホテルに泊まらないと気が済まない人との間では、かかるコストに4倍ぐらいの差ができているのです。
ゴールドコーストでUberが瞬く間に浸透したのは、オーストラリアに規制が少ないからです。日本のようにタクシー免許を取得するまでが大変ということがなく、125ドルを払って客を乗せていいというライセンスを得れば、翌日からUberに登録できます。
宿泊施設についても、日本のように規制する業法が存在せず、貸したいなら勝手に貸せばいい、というスタンスです。Airbnbなどに対する規制はないのです。好ましくない点があれば、宿泊者が口コミで低い評価を与え、お客さんが選ばなくなります。そういう時代になったのです。旅館業としてではなく、個人が商売しているのです。消火栓がなければ「ない」とネットで開示し、それを知ったうえで泊まればいいだけの話です。
このようにテクノロジー4.0というのは、すでにあなたや私の生活に相当大きな影響を及ぼしています。しかも、これは金儲けのチャンスであり、便利な生活を享受できる手段にもなっているのです。
ITの恩恵を受けられる人と受けられない人との間に生まれる経済格差、情報格差を「デジタル・ディバイド」と言いますが、新しい技術を積極的に使う人間、新しい大陸の方に移り住む人間と、そうではない人間との間には、デジタル・ディバイド以上の格差が広がっていくでしょう。
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