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「人工知能」と「無責任なアナリスト」株価予測はどちらが信用できる?=吉田繁治

予測できない投機的売買

投資ではなく投機的な売買が多い金融商品(株式、通貨、コモディティ)では、「価格予想」は不可能です。

たとえば、原油価格を考えてみましょう。もし原油価格が実需の現物売買量によって決まっているなら、経済指標との関係で、多変量解析の方程式を作ることができます。産油国の生産量予測(ゆっくり動く)と、中国の実質GDPの増加に比例する需要予測(ゆっくり動く)により、価格予想ができるわけです。

しかし、現実の原油市場は、原油先物という実需を伴わないファンドによる投機的売買が多く、価格は先物市場で決まっています。この投機的売買は予想できないものです。

このように、指数化されて金融商品に属するようになったコモディティも、数値的な根拠をもった価格予想はできない、要は「ヤマカン」にしかならないのです。

(注)不動産価格は実需で決まっているので、関連するファンメンタルズを根拠に長期的な価格予想ができます

多くの参加者が「ヤマカン」で売買

多くの人が金融商品の売買で損をすることが多いのは、価格変動の罫線(チャート)を見て、その延長上で、数理的な根拠の薄いヤマカンによって価格傾向を考えるからです。

その結果は、上がったものは上がる、下がったものは下がる(順張り)。あるいは、上がったものは下がる、下がったものは上がる(逆張り)です。要はこのいずれでしかない。

わが国の個人投資家700万人は、全体では、上がった相場では売り、下がった相場では買う「逆張り」の傾向があります。

そして順張りにせよ逆張りにせよ、株価罫線(通貨罫線)の「傾向」を、様々な根拠をつけて作り上げ、その傾向の判断により売買がされています。つまり傾向の(ヤマカンでの)判断がベースとなっているのです。

予測できる人は、世界に1人もいない

しかし、この傾向の判断は当たるのが50%、外れるのが50%です。その理由は、株価は1カ月単位ではランダム・ウォークしているからです。

後で見れば、株価(あるいは通貨)の罫線にも、ほぼ3~6カ月単位での、上がる時期と下がる時期の傾向が見えますが、そこから未来の傾向は予測できないからです。

たとえば、本稿執筆時点の日経平均株価は1万9470円です。約1カ月前の2万円に対しては、2.65%下がっています。

ここから2017年12月の日経平均株価を根拠をもって予測できる人は、世界に1人もいない。しかし実際に売買するときは、少なくとも3カ月後の株価を想定せねばならないのです。

上がるか下がるかは50:50

現物や先物を買う人は、価格が上がると想定しています。売る人は、価格が下がると想定しています。上がると思う人の買いが50、逆に下がると思う人の売りが50です。買い50:売り50で、今の株価の1万9470円が成立しています。

つまり「今日の株価は、異なる予想の売りと買いの両方が均衡した結果」です。

実際に、明日上がるか下がるか、1週間後に上げているか下げているか、3カ月後に上げているか下げているか、それは、論理的には50:50としか言えません

現在の日本株を実際に売買している人たちの予想が、仮に上げ55%、下げ45%だったと仮定します。

その予想の結果、55株の買いが出て、45株の売りが出ます。買いが10株も多ければ価格は高騰します。10株も差があれば株価は30%は上がって、1.3倍の価格で売買が均衡し、今日の価格になります。

つまり、今日の実際の売買量が均衡した価格が、今日の株価です。今日の株価(終値)になった時点で、上がるという予想と下がるという予想は50:50になっています。

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