安倍総理の「隠し玉」は何か?
10月22日に実施される可能性が高まった解散総選挙の真の「大義」は、安倍総理が自民党内での「安倍一強体制」を取り戻すことである可能性は否定できない。
しかし、こうした「大義」を正面切って掲げて選挙を戦うわけにはいかない。当然、有権者向けには、他のもっともらしい「大義」が必要になってくる。
以前に拙コラム“「政治生命をかけた冒険」安倍総理が消費税減税を決断するこれだけの理由”に記した通り、筆者は安倍総理の「政治生命をかけた冒険」とは「消費税減税」であり、総理はその是非を問うことを総選挙の「大義」として掲げることを目論んでいるのではないかと考えている。
「消費税減税」のサプライズ効果
消費税に関しては、有識者を中心に「消費増税によって財政再建に取り組む姿勢を見せることが責任政党の責務である」という意見が支配的である一方、「経済を立て直さない限り財政再建を達成することはできない」という意見も根強くある。こうした消費税に関わる長年にわたる論争に決着をつけることは、総選挙の「争点」として相応しいものである。
もし、安倍総理の隠し玉が「消費税減税」であったとしたら、田原総一朗氏の指摘する通り「言ったらぶち壊れてしまう」可能性は高い。それ故、安倍総理がどのタイミングでどのようにして「大義」を国民に披露するかが極めて重要になってくる。
安倍総理が、小泉元総理のように、「庶民の味方の安倍さんが、消費税減税に反対する財務省や自民党内の強大な抵抗勢力に立ち向かう」という構図をうまく作り出すことができれば、「安倍一強体制」を取り戻せる可能性は高い。
安倍総理がこのタイミングで解散に打って出たことに対して「政権維持」が目的であるという見方が一般的のようだ。しかし、憲法改正を果たして歴史に名を遺す野望を持っているといわれる安倍総理が、今の弱い野党に勝利して「政権維持」をするという「ちっぽけな目標」で満足するだろうか。
安倍総理の野望の大きさを考えると、解散・総選挙で目指しているのは野党に勝利して「政権を維持」という「ちっぽけな目標」ではなく、自民党内での「安倍一強体制」を取り戻すくらいの「壮大な目標」であっておかしくない。
首相は、消費増税分の使い道の見直しの意向を25日の経済財政諮問会議で表明し、衆院選で民意を問う考えを示す。
出典:消費増税、使途変更問う 首相、教育無償化に 衆院選 財政健全化遠のく – 日本経済新聞(2017年9月19日配信)
メディアは今回の解散、総選挙の「争点」は、「消費増税分の使い道」になると報じている。しかし、総理が「安倍一強体制」を取り戻す「壮大な目標」を目指しているとしたら、「消費増税分の使い道」などといった「ちっぽけな政策」を「争点」にするとは思えない。
「壮大な目標」を達成するためには、それに相応しい「壮大な政策」を「争点」を掲げるのが当然だと考えるからである。
安倍総理は「安倍一強体制」を取り戻すために、「政治生命をかけた冒険」に足を踏み入れたようである。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年9月19日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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