理論を心理で補完する
「正しい適正価格」が存在しない中で、あえて答えを見出そうとすれば、唯一の正解は市場で付いている株価です。あらゆる種類の市場参加者がいる中で、合意点として形成されるのが株価であり、それ以上の答えを見つけるのは難しいと言えます。トレーダーの間では「市場は常に正しい」という格言もあるほどです。
株価が常に正しいとすれば、株式市場で利益を出し続けるためには、いくら情報を調べても無駄ということになります。したがって、一般的な情報からは見抜くことのできない並外れた洞察力を身につけるか、公開前の情報を得なければなりません。
後者はインサイダー取引として犯罪ですから、決して手を出してはいけません。「並外れた洞察力」は、ごく一部の天才的な能力を持っている人を例外として、多くの投資家は備えているものではありません。勉強して身につけるのにも限界があり、私もそれができるとは考えていません。
しかし、私のような凡人でも、株式市場でミスプライスを見つけて、継続的に利益を上げる方法が1つあると考えます。それは人々の心理を利用することです。
すでに述べたように、株価は多くの人の様々な考え方の合意点として形成されるものです。しかし、まれにその合意点が大きく動く場合があります。それは、ほとんど全ての人が同じ方向に動いた時です。
例えば、企業のスキャンダルや業績不振が伝えられると、多くのマスメディアや市場関係者がその企業に対するネガティブキャンペーンを行います。それを見た人々は、多くの場合その企業に対する悪い印象を抱きます。人々がその企業の株を一斉に売却した結果、株価は本来の価値から「明らかに」割安になることがあるのです。
しかし、時間が経って人々が冷静さを取り戻すと、株価の動きが行き過だったことに気が付きます。そうすれば、効率的市場仮説に基づいて「正しい」株価に戻っていくのです。この戻りを利益に結びつけるのが、バリュー株投資の基本的な考え方です。
人々が合理的な判断を通り越して一斉に同じ方向に動くことは、群集心理の1つとして心理学ではよく知られています。群集心理を逆手に取ることで、普通の人でも市場に起きるミスプライスを見つけることができるのです。
つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年1月18日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。