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バリュー投資家の目の付けどころ。不完全な効率的市場仮説の隙を突け=栫井駿介

株式市場の代表的な理論に、「効率的市場仮説」というものがあります。これは、株式市場におけるあらゆる情報は、公表された時点で瞬時に株価に反映され、その結果株価はいつも適正な価値を反映しているという考え方です。

この考え方に基づくと、株価は常に合理的であり、市場の「ミスプライス」を利用して利益をあげ続けることはできないとされます。それにもかかわらず、現実の市場においては、株価が適正な価値を大きく上回る「バブル」や、その反対である「ショック」がたびたび繰り返されてきました。

私は、効率的市場仮説には一定の正しさがあるものの、同時に不完全な部分もあると考えています。バリュー株投資は、その不完全さを利用して利益をあげる考え方です。つまり、チャンスは頻繁に訪れるわけではないものの、必ず訪れるものと考えます。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

凡人でもできる、株式投資で継続的に利益を上げる有力な手法

不完全な効率的市場仮説

効率的市場仮説においては、市場参加者の全てが株式の価値に基づいて取引し、市場でやり取りされる情報が価値にどのような影響を及ぼすかを全員が知っているという前提が置かれます。

この前提は、物理科学で言う真空状態のようなものです。真空状態を前提とした物理公式が、空気や重力の存在する地球上では成立しないのと同様に、効率的市場仮説も現実の世界にそのままあてはめることはできません。

空気や重力を計算することで物理公式は修正できますが、株式市場は人間が介在するものであり、それを計算することはまだ難しいと考えられています。もしそれができたとしたら、ノーベル賞ものでしょう。

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現実の市場では、様々な考え方をする投資家が存在します。株式の価値に基づいて合理的な判断を行うとする投資家もいれば、ただ単に株価の動きだけを目標とする投資家、あるいは配当や株主優待目的の投資家も少なからず存在します。

公表された情報も全ての人が瞬時に認識するわけではない上、その受け取り方もさまざまです。ある企業が会社を買収したとしても、それがその企業の業績にプラスなのかマイナスなのか、受け取る人によって評価が分かれます。

さらに、「価値に基づいた合理的な判断」と言っても一筋縄ではありません。株式の価値の原則は、簡単に言うとその株式を発行する企業の将来の利益を足し合わせることですが、将来のことは正確に予想することはできません。それゆえに、完全に正しい適正価格というものは存在しないのです。

Next: 群集心理を逆手に取って「ミスプライス」を見つけよう

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