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「日本第一主義」時代の幕開け。なぜグローバリズムは死んだのか?=児島康孝

米国におけるトランプの勝利は、私に言わせれば「国民の生活実感がもたらした当然の結果」です。グローバル化はなぜ失敗したか?巷の評論家が見落としている点を解説します。(『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』児島康孝)

奥手な日本は今こそ「ジャパンファースト」に舵を切るべきである

自国民の保護に乗り出した英国と米国

英国米国ともに、グローバル化よりも「自国民の保護が第一」という判断です。先進国の状況はというと、日本は貧困化し、EUという域内グローバル化を進めた欧州は当初の理想から大きく離れて大混乱。トランプ大統領による「雇用重視」への政策転換は、こうした中で起きました。

理論上は、正しいようにみえる「グローバル化」。コンサルタントや評論家はバラ色の「グローバル化」を主張しますが、これは間違いであったのです。問題はどこにあったのでしょうか。

【関連】NHKが日本国民に隠した「トランプ米大統領就任演説」のキーポイント=三橋貴明

巷の評論家は「雇用」を考慮していなかった

グローバル化の推進論者は、各国が得意分野に集中することで生産性が上がり、世界は良くなると主張します。一番良いものが、一番安い価格で買える社会です。まさに「そのとおり!」と短絡的に思いそうですね。

しかし、これには大きな誤りがあります。グローバル化は、各国の国民の収入がそのまま(あるいはそれ以上)で、雇用もそのままということが前提になっているのです。

なぜ、これまで多くの人がこの誤りに気が付かなかったのでしょうか? それは、こういう理由です。

ある「物」の値段が、ある国から輸入されることで、100円だったものが80円になったとしましょう。

100%→80%(20%のディスカウント)

食料品でも雑貨でも、こうしたことは日常的に起きていますね。安く買えると、大助かりですね。

一方、雇用は、デフレで給料が8割になったとか、そういうことではありません。雇用を失えば「収入ゼロ」です。

100%→0%

これにともなって、例えばすべての買い物の価格も同様にゼロになれば問題ないのですが、そういうことはあり得ません。つまり、物の価格が2割安とかになる一方で、収入はゼロ(10割安)とか、再就職や派遣労働で収入が3割(7割安)ということが、日常的に起きたわけです。

これをみますと、グローバル化で物の値段が安くなったメリットよりも、雇用の損失のほうがはるかに大きいことがわかります。

物の価格は「下方硬直性」があって、2割安とか3割安にはなるものの、ゼロにはならない。スーパーで、商品をゼロ円で販売していることはありません。一方、雇用はゼロになり、再就職で7割安とか8割安になるということです。雇用に関しては、下方硬直性がないのです。

これが、コンサルタントや評論家たちが、グローバル化(=デフレ傾向)で見落としている点です。なので、米国民がトランプ大統領に投票したことも、一般国民の生活実感からすれば当然ということになります。

賃金には下方硬直性がない

ちなみに、物の価格の下落分と、雇用喪失分(人件費削減分)の差は、どこに消えたのでしょうか? これは、グローバル企業の内部留保と、途上国の賃金アップに流れたわけです。

先進国では、雇用がなくなれば、景気悪化と政府の社会保障費増加が起こります。さらに、グローバル企業と途上国の賃金アップが進みます。

途上国の生活コストは安く、また先進国並みの物価になるには時間がかかります。一方、先進国では、雇用を失っても、途上国のような物価にまではなりません

物価の下方硬直性。これがグローバル化をめぐる議論のカラクリです。難しい理論よりも、実際の生活実感の方が正しいわけです。昔の経済アナリストなどでも、賃金の下方硬直性を信じている人がいます。しかし現実は、物価の方に下方硬直性があり、賃金には下方硬直性はないということです。

Next: 今の日本も経済分野で「日本第一主義」を進めるべき状況にある

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