中間点よりも少しだけ米国を有利にする
旧ソ連や戦時下の日本政府のように、「労働者の強制移住」などということが国際的にも認められる可能性は極めて低い。
それでも要求しておくのは、要求引き下げの代償に、北朝鮮に何らかの譲歩を期待しているからだ。
私の見る限りのトランプ政権は、少なからずの米企業にありがちな、まずは最大規模の要求を突き付けておいて、後に現実的な所で決着する。
つまり、極端な形でアメとムチを提示し、中間点のより自分の有利な位置で決着をつけようとするように思える。
米国に代わって、日本が「2兆円」を負担させられる
もしかすると米政府援助に代わり、日本に何かを提供させるつもりかも知れない。実際に、金正恩政権は日本からは「2兆円欲しい」と嘯いている。
これは、安倍政権になってから政府の対外援助などを意味する「第二次所得収支」の赤字が急拡大、2017年の赤字幅が2兆1157億円だったことを踏まえたものだと思われる。
「2兆円」とは言わずとも、(何人かの拉致被害者の返還と引き換えに)日本から多額の資金を引き出せれば、トランプ政権は交渉を有利に進められる。
ちなみに、消費税率8%から10%への引き上げで期待される税収増は、2兆数千億円となっている。なので、安倍政権が「第二次所得収支」を黒字化すれば、引き上げ分の財源は確保できるはずだ。
トランプの要求は「半島すべての非核化」
また5月10日、北朝鮮から取り戻した韓国系米国人を出迎えたトランプ大統領は、政府専用機横で会見し、「北朝鮮を非核化する」ではなく「半島全てを非核化する」と語った。
このことは、米韓同盟を廃棄し、在韓米軍の引き上げを示唆する。これは、在日米軍を強化すれば実現できることだ。
横須賀は首都がある東京湾の出口に位置するため、戦前は日本海軍の拠点だったが、今は米軍が駐在している。首都にある横田基地には、オスプレイが配備された。
南北が統一されるなら、在韓米軍を日本に移動させても軍事的に問題があるどころか、守備面も考慮すればむしろ強化できる。