女性や高齢者が追い込まれる。低賃金で働くしかない未来
政府の財政出動を切っ掛けに、国内の需要を膨らませ、生産年齢人口の男性が全員働いても人手不足が続き、実質賃金が上がり続け、女性や高齢者も「豊かになる」ために働く環境を作るというならば分かります。
が、実際には配偶者控除廃止や、成年男子の賃金引き下げにより、女性や高齢者が低賃金でも働かざるを得ない状況に追い込む政策を推進するに決まっています。
増えない需要(=仕事)という環境下で、労働供給を無理矢理増やせば、実質賃金はさらに下がります。国民を貧困化させ、安い賃金でも働かざるを得ない状況に追い込むというわけです。
国民生活無視の法人税減税と規制緩和
また、内部留保がひたすら積み上がっている状況で、法人税を引き下げて何をしたいのか、さっぱり分かりません(いや、分かっていますが。利益を増やし、グローバル投資家の配当金や企業の自社株買いを増やしたいのです)。
もちろん、設備投資減税や地方移転減税を拡大するというならば分かります。とはいえ、現実には経済財政諮問会議の連中が主張しているのは、無条件の法人税減税です。
さらに、規制緩和で設備投資を増やすに至っては…。デフレで儲からない環境で、企業が設備投資を増やすはずがありません。もちろん、規制緩和で既存の所得のパイに新規参入し、別の国民の所得(付加価値)を奪う「レント・シーキング」をしたいというならば、話は別ですが。
TPPを活用して、インフラ輸出…。久しぶりに「orz」を使いたくなりました(編注:orzは人が四つん這いになってうなだれる様子を表現したアスキーアートの一種)。いったい、どこの国に、いくらのインフラを輸出するのでしょうか。インフラって、具体的に何ですか?
しかも、訪日旅行外国人依存。どこまで、自虐的なのでしょうか。
「日本経済は内需中心では成長できない」を疑え
結局、日本経済は「内需中心」「国民の所得中心」で成長できるとはまったく思っていない連中(あるいは思いたくない連中)が、政府の財政出動により需要を創出し、日本国民の所得を増やすことで、
「インフレギャップ⇒生産性向上⇒国民の購買力上昇⇒インフレギャップ」
という、正しい経済成長に背を向け、経済政策のグランドデザインを書くから、我が国の経済は長期低迷しているのです。
残念ながら、安倍政権の「2020年GDP600兆円目標」は、未達に終わりました。
伊藤元重ら、過去の日本をダメにしてきた御用学者たちが退場しない限り、日本経済の復活は極めて困難と断ぜざるを得ません。安倍政権は、このままでは時代に取り残された連中と手を携え、日本国を巻き込みながら沈んでいくことになるでしょう。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/11/6号より
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