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米中対立の背後で進む「ロシア」の急拡大、圧倒的軍事力で南米・アジア制覇はすぐそこに=高島康司

アジアにおけるロシアの拡大

これだけ見ても、ロシアの拡大には目を見張るものがある。しかし、それだけではない。ロシアはアジアにも確実に影響圏を拡大しつつある

ロシアは「上海協力機構」などにも加盟し、中ロ同盟と呼ばれるほど、アメリカに対抗する強固な協力体制を中国との間に築いている。中国はアジア地域でいち早く「S-400」の導入に踏み切った。またインドも「S-400」を導入した。ロシアが中国とインドに築いたこのような関係は、広く知られている。

しかし、ロシアの影響がある新たな国々が次々と出現している。それらは、ベトナムミャンマー、そしてインドネシアだ。

まずベトナムだが、ここは同じ社会主義国でありながらも中国と対抗していたので、もともとソ連と近い関係にあった。しかし、ソ連崩壊後、ロシアの国内的な混乱から、そうしたかつての近い関係は消滅しかけていた。しかし、数年前からベトナムはロシア製兵器の購入に踏み切り、両国の関係が強まっている。昨年の9月には10億ドル同等の兵器の購入契約を結んだ。また、ロシア製潜水艦6隻を20億ドルで購入し、最後の6隻目は昨年の1月に届けられた。

また、少数民族の「ロヒンギャ」の虐殺で欧米各国の制裁下にあるミャンマーは、ロシアが中心的な兵器の購入先になっている。すでに14機の「MiG-29」戦闘機、9機の「Mi-35」攻撃用ヘリコプター、12機の「Mi-17」輸送用ヘリコプターを購入している。そして、さらに6機の「Su-30」戦闘機が導入される予定だ。

かつてミャンマーと同じ立場にあった国がインドネシアだ。1990年代、「東チモール」の独立戦争でインドネシア国軍が虐殺に関与したとして、アメリカの制裁下にあった。そのとき、武器の中心的な供給先になったのがロシアだった。アメリカの制裁は2006年に解除されたものの、インドネシアとロシアとの関係は続き、最近ではさらに強固になっている。いまインドネシアは「S-400」の導入を真剣に検討しているもようだ。

ロシアの影響圏拡大の目的

これが、アジアにおけるロシアの影響圏拡大の状況だが、これを見るとある矛盾に気づく。紛争の当事者双方に兵器を売っているのだ。

例えば、ベトナムがロシア製潜水艦を購入した理由は、「S-400」を中心としたロシア製兵器を導入している中国の南シナ海における拡大を抑止するためだ。

また、中国とインドはともに「S-400」を導入しているが、これは中国とインドとの「カシミール」を巡る争いで相手を牽制するために使われるはずだ。

これを見ると、アジアでロシアは需要のある国にただ兵器を売っているだけで、そこにはなんの戦略もないようにみえる。しかし、多くの地政学者や軍事アナリストはそうではないという。

ハイテク覇権を巡る米中の対立はその典型だが、このまま行くと世界はアメリカと中国という2つの陣営に二極化する方向に向かう。

ロシアは、こうした二極型の秩序に抵抗し、ロシアの影響圏という第三極を、世界秩序の柱のひとつとして構築することを目標にしているのではないかという。

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