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高橋洋一氏「日本の借金1000兆円はやっぱりウソでした」論は本当か?=吉田繁治

2.日銀が国債を買えば、その分、政府の債務は減るのか

■質問

T氏は、15年12月28日の記事で、日銀が国債を買った分、政府の債務は減ると言っています。他のリフレ派のエコノミストにも、H氏などを代表に、同じことを言う人が多い。

日銀が国債を買えば、その分、政府の債務は減ったと見ていいのでしょうか?ここが分からない。常識で言えば変ですが、著名なエコノミストも言っています。

もしそれが正しいなら、1000兆円の国債を日銀が買ってしまえば、政府の債務はゼロになります。政府は税金を全廃でき、代わりに国債を発行して日銀に買ってもらえばいいことにもなるでしょう。日本も世界も無税国家になりえます。これはすごいことになりますけれど?

■答え

日銀が国債を買うことによって、国債残高が減ると言うのは、日銀と政府を連結で見た「統合政府」を想定したときです。

マクロ経済学の教科書にもあるのがこの統合政府という考え方です。日銀を政府の子会社として考えると、統合政府になります。

【政府の、国債発行に関するB/S】

借方(資産) 貸方(負債)
累積財政赤字 1000兆円 国債発行残高 1000兆円

これが、政府の累積財政赤字に該当する部分の、政府B/Sです。

【日銀の国債保有は328兆円です(15.12.22)】

借方(資産) 貸方(負債)
国債保有 328兆円 発行銀行券 96兆円
当座預金 247兆円

これが、日銀の、国債保有に関する部分のB/Sです。国債だけに関するB/Sでは、若干の、資産・負債の差異が出ます。
営業毎旬報告(平成27年12月20日現在) – 日本銀行

発行銀行券(96兆円)は、日銀が発行した96億枚の1万円札です。当座預金(247兆円)は、国債を買った日銀が、それを売った銀行が日銀にもつ当座預金に代金を振り込んだものの合計です。

2008年のリーマン危機以降の日銀は、FRBをまねて、この当座預金に0.1%の特別金利をつけて、預かっています。

【統合政府:政府の国債に関するB/Sと、日銀のB/Sの連結】

借方(資産) 貸方(負債)
財政赤字 1000兆円 発行銀行券 96兆円
当座預金 247兆円
国債発行 657兆円

政府と日銀を連結にすると、日銀がもつ政府負債の国債343兆円(実際は328兆円)は、日銀がもつ日銀資産の国債333兆円と相殺されると見ることができます。

日銀がもつ国債は343兆円あるのですが、統合政府として見れば、この343兆円は部門間の貸し借りの内部取引になって、相殺されます。

この結果、発行銀行券の96兆円、当座預金247兆円、そして日銀以外の金融機関がもつ国債657兆円(海外は100兆円)になるのです。

343兆円の国債は、「統合政府」では、発行銀行券の96兆円、当座預金247兆円に代わっています。このため、343兆円の国債がなくなって、償還と利払いの要らない現金と当座預金(普通は金利ゼロ)になったように見えるのです。

T氏は、以上のことを

  1. 日銀が国債を買えば、その分、国債は減る。日銀が買った国債は、現金と当座預金に振り替わるが、現金と当座預金は利払いも返済も要らない負債である
  2. 日銀が買った国債分は、「国債が減った」と見なしていい

といっています。これは、この通りです。しかし、以下で重要なことを言います。

インフレにならない限りは、T氏の立論は正しい

インフレならない限り、日銀は、毎年80兆円の国債を買い増す異次元緩和を続けると言っています。インフレ率が2%以下の状態が2018年まで続いたとすれば、統合政府のB/Sは、以下になるでしょう。
(※注)政府の国債の新規増発が35兆円/年、日銀が買いとるのを年80兆円とします。これから3年分は、この3倍です。現金需要の増加は少ないので、現在の96兆円と同じとします。

【2018年末の、統合政府のB/S(想定)】

借方(資産) 貸方(負債)
国債発行 1105兆円 発行銀行券 96兆円
当座預金 487兆円
国債発行 522兆円

日銀がもつ国債は、327兆円から567兆円(発行高の51%)に増えます。このため、金融機関が預ける当座預金の残高が487兆円と、2015年12月22日より、240兆円(80兆円×23年分)膨らみます。

日銀以外の金融機関がもつ国債は522兆円になって、現在(657兆円)より、135兆円も減ります。日銀が1年に80兆円買って、金融機関がもっていた国債を「買い剥(は)がした」からです。

このときは、国債の金利は、10年ものものも、マイナスになっているでしょう。国債の金利がマイナスとは、発行額面100万円の新規債を、日銀が(例えば)、101万円で買うということです。このとき、政府から100万円の発行価格で買った銀行は、右から左に日銀に売れば、1万円の利益が1日で出ます。

わが国が2%のインフレにならない限り、日銀が国債の買いを増やすと、その分政府の発行国債は減って、現金と当座預金に振り替わります。

以上のように、「当座預金に振り替わる」という意味では、T氏が言った「日銀が国債を買い増せば、政府の借金は減ったようになる」というのは正しい。

このため、財政破産はありえないと言うのが、T氏とリフレ派です。ところが日銀が国債を買い増しても、政府の財政破産はあり得るのです。それは、異次元緩和の目的であるインフレになったときです。

2%から3%くらいのインフレになると、日銀が買って金利ゼロの当座預金になっていた国債は、再び、金利のつく国債に戻らねばならなくなるからです。といっても、分かりにくいでしょう。以下で説明します。

今のところ、こうした論評は見当たりません。このためT氏が、「偽説を言いまくっている」ように思えます。反論する人がいないからです。当方がここで反論します。

Next: 3.異次元緩和から5年後の2018年、インフレ率が2%を超え3%に上がったら?

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