「通貨価値の安定」に着手するときが『1984』の始まり
インフレを退治しなければならないはずの日銀自身がインフレを誘発するのですから、それまでは誰にも止めることはできないのです。
インフレをコントロールするには、日銀の権限を拡大する法案を国会で通過させなければならなくなります。
政府とて、インフレによって財政赤字が少しずつ解消されるのであれば、金利が上昇しない限り日銀のインフレ政策の後押しすることはあっても、反対することはないでしょう。
同時に、莫大な不良債権を抱える金融業界もインフレをしばらくの間は歓迎するでしょう。
こうして企業・個人が望むハイパー・インフレの道筋がつけられていくのです。
もはや、国民・政府・金融業界をはじめとする財界からも後押しされて、強大な権限を手に入れた日銀は、向かうところ敵なし。
インフレで自分たちの資産が、すっかり減価されてしまっても、大部分の国民は暢気に構えているでしょう。
「なーに、インフレが収束すれば、また戻って来るさ」と。
そして、日本はハイパー・インフレに突き進んでいくのです。
最後に、政府の債務、金融業界の不良債権の大方をきれいさっばり洗い流した後で、日銀は金融引き締めを行い、金利上げをほのめかすようになるでしょう。
日銀のインフレ・コントロールは、荒療治とはいえ、ある程度は成功するでしょう。
国民の一層の信頼を取り付けた日銀の次の一手が、「通貨価値の安定」に着手することです。それこそが、オーソン・ウェルズの近未来SF『1984』の舞台となっているキャッシュレス・エコノミーへの新しい金融システムの構築なのです。
いよいよ政府と日銀が国民に牙を剥く――インフレ、預金封鎖、資産課税
ハイパー・インフレの大元の原因は、財政赤字による国債の乱発と、それを日銀を直接引き受け、無尽蔵に紙幣を印刷して市中に放り投げることによって起こるのです。
これを止めるためには、国民の資産を没収して国債の償還に充てればいいのですが、その際に、いったん銀行を閉じて預金封鎖をする必要があるのです。
そのために必要なことが、名寄せを一人一人行って、資産状況に応じた財産税をかけるための準備なのです。
同時に、新札への切り替えが必要になってくるので、「いついつまでに新札に切り替えてください。そうしないと、現在の紙幣は廃止されるので物が買えなくなりますよ」と政府は呼びかけます。
このとき、新札切り替えまでの期限が設けられるので、タンス預金や闇経済の資金が炙り出されます。
しかし、上限額以上は預金から引き出すことができず、そのときに地下経済は壊滅させられるのです。
よく、預金封鎖でデノミが行われるのか、と想像する人がいますが、それはグローバル化の時代には無理です。
ただし、それまでにキャッシュレス・エコノミーから、世界中が完全なるペーパーレス・エコノミーへの移行を済ませていれば可能でしょう。
現金だけでなく、すべての債券もデジタル化されれば、プログラムをいじくれば一種にして再評価を与えられます。
早くも、日本の1万円札の廃止や、100ドル札の廃止論まで検討されているのです。