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なぜ真逆の動き?退職4倍増の若手官僚と、49.6%が公務員を目指す大学生=鈴木傾城

「大学生の49.6%が公務員になりたい」という結果の意味

ところで、官僚・キャリア組等の国家公務員総合職を目指すエリートは減っているのだが、これとは別に面白い傾向もあることは以前に指摘した。2020年3月卒業予定の大学3年生に「就職したい企業・業種」を調査したら、以下のような結果が出てきたというものだ。

1位:地方公務員 31.6%
2位:国家公務員 18.0%

これについては、以下の記事で詳しく取り上げた。

【関連】大学生の49.6%が「公務員になりたい」と回答、日本はあと数年で救いようのない国になる=鈴木傾城

端的に言うと、国家公務員総合職(官僚・キャリア)を目指すエリートは減っているのだが、ごく普通の若者は逆に「公務員になりたい」と思っているということだ。若者が地方公務員を目指すというのは、その理由に「日本経済の停滞を見越して安定志向を強めている」ことにある。

日本は少子高齢化を放置して、イノベーションを生み出す民間企業よりも、高齢者の介護やら老人ホームの運営が成長産業になるような国であり、正社員もどんどんリストラされて非正規雇用者が増え、非正規雇用者をピンハネする人材派遣会社が幅を利かせるような社会になっている。

さらに企業はコストを下げるために、途上国から若者を「留学生・実習生・単純労働者」のような形で連れてきて低賃金で働かせてコストを下げるような搾取構造を作り上げている。

若者でなくても「こんな国では先が見えている」と惨憺たる思いになる。

だから、今の若者は日本経済の停滞を見越して、いったん潜り込んだらクビにならない公務員で人生をやり過ごそうと思うようになっている。その結果が「大学生の49.6%が公務員になりたい」という回答なのである。

しかし、エリート中のエリートは、もう公務員になりたいと思っていない。つまり、国家公務員総合職(官僚・キャリア)に就いて、国を作り上げたいとは思っていない。そこに魅力を感じていない。

「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」

30歳未満の国家公務員の中で「辞める準備をしている」「1年以内に辞めたい」「3年程度のうちに辞めたい」とした人が男性で約15%、女性で約10%である。
※参考:国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進に関する職員アンケート結果 – 内閣官房

退職理由で最も多いのは「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」という回答で、男性の49%、女性の44%がこの回答理由だった。

1府12省庁で働く官僚・キャリア組と言えば、国の財政や外交や防衛や国会の各機関で「政策」を企画立案し、政治家と共に「国を作っていく」壮大な仕事に就いている人たちである。

言ってみれば、彼らは「国」という巨大な生命体の頭脳であり、国を生かすも殺すも彼らの働き次第に関わっている。国家公務員は「国民の奉仕者」として規定されているのだが、国家公務員総合職においては「国家の運営者」でもある。私たちは彼らに国家の運命を託している。

だからこそ、エリート中のエリートの少なからずは官僚となって、バリバリと働くことに生き甲斐を見出し、国家のために、日本のために、長時間労働すらも厭わないで働こうと大きな気概を持ったはずなのだ。

しかし、今の若手官僚はすでに国家のために働くことに「やりがい」を感じておらず、長時間労働も苦痛に感じるようになり、退職者の半数が「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」と言って辞めていこうとしている。

Next: 「議員とのやり取りは86%がFAX」ムダ作業に疲弊するエリート官僚たち

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